オペラ放浪記 2001年編 ヨーロッパ・オペラ鑑賞旅行記
A Diary of an Opera Wanderer in Europe; 2001 by Mitsuru Harada
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−『オペラ放浪記2』(2002〜03年編)はこちら
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
原田 満著 A5判321ページ 2004年11月25日初版発行 定価2,730円(税込)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヨーロッパのオペラは安い!
総額60万円。61日間、列車内28泊
オペラ59本、演奏会12回聴きまくり
全公演の詳細データを掲載
「ヨーロッパでは、普段着のまま、気軽にオペラを愉しむのも、決して珍しいことではありません。多くの劇場では、手軽な料金(1000円から2000円程度)で、入場することが可能です。そこで、私は、地元のオペラ・ファンと一緒に、気軽にオペラを愉しむような旅行をしてみようと思いました。この本では、ティケット確保の要領や、比較的安い宿の情報なども詳しく紹介しています。多くの方々が、気軽にオペラの愉しみを味わっていただける参考になるように、この本を書きました」
|
ISBN4-434-05227-6 C0073 \2600E
ご購入の流れにつていはこちら●プロフィール
原田 満(はらだ みつる)
1961年 横浜生まれ。
横浜国立大学経営学部(会計学)卒。
成城大学大学院文学研究科(美学芸術学)博士課程終了。
成城大学文芸学部講師、横浜市教育委員会主催・教文セミナー講師などを経て、
現在、放送大学講師。
◎目次
序 章 5
はじめに 5
準備&実践編 6
第1章―2月7日〜20日 12
ラトルの「トリスタンとイゾルデ」に痺れる
ヴィーンで「ビリー・バッド」のプレミエに立ち会う
フランクフルトで、リーム「メキシコの征服」再演
2月07(水)チューリヒ「ドン・カルロ」 12
08(木)ブリュッセル・マリブラン「魂と肉体の劇」(カヴァリエーリ) 17
09(金)アムステルダム「トリスタンとイゾルデ」 21
10(土)ブリュッセル・モネ「オテッロ」 27
11(日)エッセン「コジ・ファン・トゥッテ」 30
12(月)ヴィーンSO「ビリー・バッド」プレミエ 34
13(火)ヴィーンSO「ドン・カルロ」 38
14(水)フランクフルト「メキシコの征服」(リーム) 42
15(木)ヴィーンSO「ばらの騎士」 47
16(金)ハンブルク「サロメ」 51
17(土)デュッセルドルフ「アルチーナ」 54
18(日)ハンブルクNDR&「ボリス・ゴドゥノフ」 59
19(月)デュッセルドルフ「アルジェのイタリア女」 64
20(火)ミュンヒェン「皇帝ティートの慈悲」 67
第2章―2月21日〜3月4日 72
レッジョ・エミーリアで、ロッシーニの1幕もの特集
シュトゥットガルトで演目変更!
ボローニャで、デヴィーアのドニゼッティに感激
2月21(水)レッジョ・エミーリアTA「ブルスキーノ氏」 72
(同時に上演予定の「なりゆき泥棒」は中止)
22(木)レッジョ・エミーリアTA「幸福な間違い」「結婚手形」 77
23(金)レッジョ・エミーリアTA「絹のはしご」 82
24(土)エッセン「ルイーザ・ミラー」 85
(予定は、ライプツィッヒGH/ツァグロゼク指揮「ユビュ王の食卓の音楽」他)
2月25(日)シュトゥットガルト「ホフマン物語」 88
(予定は「ドン・カルロ」)
26(月)ヴィンタートゥール「ボリス・ゴドゥノフ」 93
27(火)チューリヒ「アルフォンソとエストレッラ」 99
28(水)カールスルーエ/ヘンデル「ベレニーチェ」 102
3月01(木)チューリヒ「ファルスタッフ」 107
02(金)レッジョ・エミーリアTMV 「愛の妙薬」 111
03(土)ボローニャ「ルクレツィア・ボルジア」B 116
04(日)ボローニャ「ルクレツィア・ボルジア」A 121
第3章―3月5日〜17日 127
フランクフルトの「ナブッコ」は上演不能?
ハイデルベルクの「ル・グラン・マカーブル」に驚く
パルマの「ノルマ」で、ヤジ合戦!
3月05(月)ミュンヒェン・フィル/ルイージ指揮「C.リルケの愛と死」 127
06(火)ハンブルク「ロベルト・デヴリュー」C 134
07(水)ブリュッセル(パレ・デ・ボザール)「セミラーミデ」C 139
08(木)エッセン「エレクトラ」 143
09(金)ドレースデン「サロメ」 147
10(土)ケルン「ファルスタッフ」 152
11(日)フランクフルト「ルイーザ・ミラー」(予定は「ナブッコ」) 156
12(月)ハイデルベルク「ル・グラン・マカーブル」(予定は「イェヌーファ」) 162
13(火)ブリュッセル(パレ・デ・ボザール)「メフィストーフェレ」C 170
14(水)ハンブルク「カヴァレリア・ルスティカーナ」「道化師」 175
15(木)ミュンヒェン「アラベラ」 178
16(金)パルマ「ノルマ」 182
17(土)シュトゥットガルト「ジュゼッペとシルヴィア」 191
第4章―3月18日〜28日 199
ドレースデンの聖十字架教会で「ヨハネ受難曲」
パリで新作オペラ「K...」
ドレースデンで新作オペラ「ツェラン」
3月18(日)ドレースデン・フィル&聖十字架教会「ヨハネ受難曲」 199
19(月)ミュンヒェン(プリンツレゲンテン)ブーレーズ指揮EIC 208
20(火)ベルン「マノン」 211
21(水)ザンクト・ガレン「シモン・ボッカネグラ」 215
22(木)デュッセルドルフ「マクロプーロス事件」 220
3月23(金)パリ・バスティーユ/マヌリ「K...」 222
24(土)パリ・シャンゼリゼ劇場「時と悟りの勝利」 229
25(日)パリ・バスティーユ「ドン・カルロ」&シャトレ座&ガルニエ 232
26(月)パリ・シャトレ座「オテッロ」 238
27(火)ドレースデン「ツェラン」 243
28(水)ベルリンDO「アンナ・ボレーナ」 251
第5章―3月29日〜4月9日 256
衝撃の「沖縄のおじさん」
ドイツから日帰りで、ボローニャの「一日だけの王様」
最後は、ミュンヒェンで「パルジファル」
3月29(木)ミュンヒェン「アリオダンテ」 256
30(金)ヴィーンSO「パレストリーナ」 260
31(土)ヴィーンSO「ルル」 263
4月01(日)ヴィーン交響楽団&ヴィーンVO「カンダウレス王」 266
02(月)シュトゥットガルト「トゥーランドット」 270
03(火)ミュンヒェン「ドン・パスクワーレ」 275
04(水)ボローニャ「一日だけの王様」 279
05(木)ウルム「マリア・ストゥアルダ」 283
06(金)カールスルーエ「死の都」 288
07(土)ヴッパータール「カプレーティ家とモンテッキ家」 292
08(日)バイエルン放送響&ミュンヒェン「パルジファル」 296
09(月)ミュンヒェン出発 306
ふりかえって、いろいろ…… 307
おわりに 311
1998年&1999年 海外での鑑賞記録 314
はじめに
三谷礼二氏の『オペラのように』(筑摩書房、1992年刊)に、次のようなくだりがあります。
「五十万円で、ヨーロッパ三ヶ月の旅行が可能であろうか? しかも、オペラの入場料コミで----。答えは“イエス”である」(同書、「オペラ無宿のすすめ」17頁より)
このエッセイが書かれたのは、1970年です。従って、それから30年以上が経っている現在、同じ金額では無理だろう、ということは容易に想像がつきます。しかし、私のこれまでの何回かのヨーロッパ旅行の経験から、「お金は切り詰めれば、何とでもなる」ということは、良く分かっていました。そこで、「できるだけ安く、できるだけたくさんオペラを経験する」旅行を考えてみようか、という気持ちがわいてきました。
あまり仕事の無い時期を選べば、何とか2ヶ月程度の休みは確保できそうでした。お金には、それほど余裕があるわけではありませんが、預金をかき集めれば何とかなりそうでした。そこで、「目標:2ヶ月で50本」という、オペラ旅行を計画してみることにしました。
そして、98年に、初めてこのような旅行をしました。この時は、57日間の滞在で、オペラ53本、コンサート・リサイタル6回、つまり、2日は、コンサートとオペラを梯子するという日程となりました。また、99年には、36日間滞在で、オペラ35本、オーケストラの演奏会1つ、その他の公演2つを聴いてきました。
98年の時は、ティケットや宿の予約をほとんどしないで、行き当たりばったりの旅行でした。その後、確実に「安い席」を予約したり、必要に応じて「安い宿」に予約を入れたりするようになりました。一方、予約をする、従って、あらかじめ予定を決めると、旅行から行き当たりばったりの「自由」が奪われるのも事実です。
今回、このような形でまとめることにした、2001年の旅行ですが、ある程度、現地の事情も分かってきましたので、半数弱の公演は、あらかじめ日本から予約を入れておきました。従って、98年の時に比べると、その「自由」は、やや少なくなっていますが、「安い席を確保する」という点では、確実さが増しました。
結局、この2001年の旅行では、61泊して、オペラ59本(1幕ものも1本として)と演奏会などに12回行きました。
さて、一口に「オペラの愉しみ」と言っても、その「愉しみ方」には、色々なアプローチがあると思います。ところが、日本で出されているオペラ雑誌・案内では、どちらかと言うと、「素敵なホテルに泊まり、おいしい食事をして、ゆったりと贅沢な時間を過ごす」というやり方が紹介される場合が多いかと思います。
しかし、ヨーロッパに行ってみると、そうではない愉しみ方に多く出会うのも事実です。普段着のまま、気軽な値段で、オペラやコンサートを愉しむ人も決して少なくありません。そこで、私も、なるべく気軽なスタンスで、オペラを愉しんでみようと、思うようになりました。私がヨーロッパを何度か旅行して感じることは、お金のある人は、ある人なりの愉しみ方が、お金にそれほど余裕の無い人でも、それなりの愉しみ方が可能であり、この幅が日本で想像する以上に「広い」ということです。
確かに、「安く」あげるためには、ある程度のコツが必要ですが、しかし、それが分かれば、海外からの旅行者でも、地元のファンと一緒に、気軽にオペラやコンサートを愉しむことが可能です。この本では、できるだけそのようなコツが分かるように書いてみました。
あとがき
現在では、インターネットなどを通じて、世界中の情報を手に入れることができます。オペラに関しても、どこでどんな上演があるとか、どの歌手がどこで歌うとか、あるいは公演についての評などを、一瞬で調べることができます。また、CD や DVD によるオペラ鑑賞も手軽にできますし、さらには、インターネットでの放送を通じて、海外の公演を「同時に」鑑賞することも可能になっています。しかし、「生」の舞台に接するとなると、様々な制約に縛られます。時間、場所の移動等々。そこで、私は、できるだけ「生」にこだわりたいという気持ちから、このような旅をしてきました。やはり、「生」でなければ分からないことはたくさんあります。劇場、客席の雰囲気、聴衆の反応等々。
また、日本で出ている海外オペラ公演のレポートですが、どうもメイジャーなところが多いように思います。しかし、もし、オペラを「文化」と考えた場合、メイジャーな劇場だけでなく、中小の劇場に対する理解も大切なのではないか、と思うこともあります。確かに、ヨーロッパの中小劇場の中には、レヴェルのそれほど高くない上演が行われている場合があるのも事実ですが、かと言って、そのような中小劇場の活動が無意味ということは決してないと思います(財政的に、厳しい劇場は少なくないのも事実ですが)。日本の音楽ファン、オペラ・ファンの一部には、「トップ・レヴェルの公演だけ聴けばいい」と思っているような人がいるように感じることがありますが、これはある意味、「ブランド志向」と通じる点があるような気がしてなりません。本当に中味を吟味せずに、評判やネイム・ヴァリューによって、行く公演を選んでいる人もいるように思います。しかし、もし、オペラ、音楽を「文化」と考えた場合、そのすそ野の広がりを理解するのも大切なことかもしれません。そうして、中程度のレヴェル、底辺のレヴェルを知ることによってこそ、本当の頂点のレヴェルが分かってくるのだと思います。
私が、このようなオペラ旅行記を初めて書いたのは、1998年の4月でした。1998年の旅行中に、ニフティ会員の方に会い、その方から「演目・日程など、是非アップ(書き込む)して欲しい」と言われ、帰国後に会議室に書いたのが最初でした。その頃は、自分の書いたものを、本にして出版しようとは、全く考えていませんでした。ところが、私が書き続けていくうちに、「なかなか面白い」「本にしてはどうか」という意見を寄せてくださる方が何人かいらっしゃいました。
私が書き始めた頃は、それほど決まったスタイルはなく、旅のことも含め、公演の様子などを思いつくままに書いていました。そうして、私の書いたものに、色々なコメントを寄せてくださる方々がいらっしゃいました。従いまして、当初は、私一人が一方的に書くというより、色々な方のコメントにお答えするかたちで、私の書き込みが増えていきました。このような交流を通じて、読んでくださる方々が、「どういうことを知りたいのか」が少しずつ分かってきました。
ところで、2001年の頃は、1998年の時ほど多くのコメントがありませんでした。恐らく、2000年頃から、会議室への書き込み数は減ってきていましたので、そのせいかもしれません。従って、この2001年の放浪記を書いた頃は、私の方で、「こういうことを書けばいいだろう」という判断のもと、時間のある時に一人で書き続けました。
以上のような理由から、この放浪記ができあがるためには、会議室で色々なご意見・ご感想を寄せてくださった方々の「力」があったことを、ここに感謝申し上げます。ここでお名前(ハンドル名)をご紹介することはできませんが、私の書いたものを「好意的」に読んでくださった方々には、心よりお礼申し上げます。
私の専門は美学芸術学ですが、この本は「一オペラ・ファン」という立場から書きました。私としては、専門的知識は無くても、「オペラの愉しさを味わうことはできる」というスタンスで、書いたつもりです。どうも、日本では、オペラは「知識・教養が無いと、理解できない・愉しめない」と考えている方が少なからずいるように感じています(勿論、知識があれば、それだけ理解が深まるのは、事実ですが)。日本でも、もっと、もっと多くの人が、気軽に、オペラの愉しみを味わってくれたらいいのに、と思ってこの本をまとめました(そのためには、安いティケットが手軽に入手できることも大切です)。
今回、このような形で出版することになったわけですが、カメラータ城島の萬年順子さんのお力添えに感謝致します。また、萬年さんをご紹介してくださった、ニフティ会員の桑田きく子さんにもお礼申し上げます。さらに、私の書いたものの「面白さ」を評価してくださった、指揮者の星出豊先生に、感謝申し上げます。
大学時代にお世話になった、國安洋先生、郷司敬吾先生、大崎平八郎先生、また大学院時代にお世話になった、浅沼圭司先生、戸口幸策先生、新井恵雄先生に、感謝致します。出版に際しては、知玄舎の小堀英一氏に大変お世話になりました。深く感謝申し上げます。私の旅行中、留守を預かってくれた母にも感謝しています。本当に、多くの方々のご協力で、この本が出来上がりました。Grazie!!
最後に、世界のオペラ・ファンに乾杯!