神様と遊ぼう!! (2023年12月新刊)
――新宿歌舞伎町を守護する稲荷鬼王神社
語り手:大久保直倫 稲荷鬼王神社 宮司/著者:西田みどり
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■書店販売書籍:なし
■POD書籍: \1430 (消費税10%含む)/(A5判138頁 ISBN978-4-910056-62-3)
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◎本書について
「鬼の王」のパワーを持つ新宿歌舞伎町のユニークな神社について、第十六代目の大久保宮司が語ったことをまとめた「稲荷鬼王神社」の解説書。
・ | 日本最大級の歓楽街、東京、新宿歌舞伎町エリアの東北角に、「鬼の王」の名と力を持つ神様を祭る神社が鎮座している。「稲荷鬼王神社」である。御祭神は、宇賀能御魂命、月夜見命、大物主命、天手力男命……と意味深だ。江戸時代ごろから新宿と呼ばれるこの地を守護。境内の稲荷神社に「鬼王権現」を勧請し合祀したことから、いまの神社名となった。そんな歴史と鬼をも祭るところがユニークだが、それとともに、この神社の境内では、肩身が狭くなっている喫煙や特殊なジェンダー関係も許される自由さがあり、神とも鬼とも触れ合うことができる仕掛けも設けられ、さらに夜に参拝できる公共性がある。参拝者の常識をくつがえす、何でも受け入れてくれる寛容性が高い神社なのである。もちろん日本最大級の歓楽街、歌舞伎町の鬼門に鎮座しているだけに、睨みを利かすだけの鬼王パワーは半端ではない。御利益絶大のパワースポットなのである。本書は、そんなユニークな神社について、代々世襲されてこられた第十六代目の大久保宮司に、真正面から語っていただき、西田みどりがまとめ上げた「稲荷鬼王神社」の解説書である。 |
◇著者プロフィール
西田みどり
編集者・著述業。文学博士。2006年、「まことと救世主――久米邦武の比較文化論」で中外日報社・涙骨賞受賞。芝浦工業大学、学習院大学、大正大学等の講師を経て現職。著書に『〈型〉で書く文章論』『論理的文章作法』『[異界見聞録6]平田篤胤著「勝五郎再生記聞」現代語超編訳版』『[当事者研究]新しい自己発見の方法――熊谷晋一郎東大准教授による高校での当事者研究』(編集著)(以上、知玄舎)、『サイババ超体験』『抱きしめる聖者アマチの奇蹟』(以上、徳間書店)、『異次元体験アストラルトリップ』(学研)、『激動の予兆シャーマン探訪記』(ヒカルランド)など多数。
●目次
プロローグ 神様と遊ぼう――社があなたを待っている、そこは新宿歌舞伎町
◎「道義的繁華街」構想から生まれた東急歌舞伎町タワー
◎歌舞伎町のど真ん中で睨みを利かせる稲荷鬼王神社
◎神様は参拝者を大歓迎「一緒に遊ぼう!!」
◎道順――最寄り駅は東新宿
第1章 「たくさんたくさんお願い事をしてください」
――お願い事を大肯定する稲荷鬼王神社
◎新宿歌舞伎町2丁目にある「鬼のパワー」を搭載した神社
◎「鬼」は紀州熊野詣での道中より勧請された
◎「たくさんたくさん願い事をしてください」
◎「やりたいことがない、願い事がない」若者が増加している
◎願いがかなったら、お礼参りよりも、まず周囲の人に感謝を
◎豆腐断ちによる病気平癒の願い事はお礼参りが必要
◎願い事をかなえるためのダメ押しの実践法
◎「お守りをご祈祷者か必要な分だけ授与する」という下賜物
第2章 稲荷鬼王神社の御祭神
宇賀能御魂命、月夜見命、大物主命、天手力男命
◎御祭神は本殿と境内神社にお祀りされている
◎お稲荷様 宇賀能御魂命
◎鬼王様・御祭神:月夜見命
◎鬼王様・御祭神:大物主命(別名:大黒天)
◎鬼王様・御祭神:天手力男命
◎三島神社、御祭神:事代主命(別名:開運恵比寿)
◎浅間神社 御祭神:木花開夜昆賣命
◎水盥台石・力様
◎社殿正面の狛犬は子を愛でている姿
第3章 神様がお喜びになるのが一番だから
「これもOK、あれもOK」神社の寛容な試み
◎写真撮影は外だけでなく、社殿のなかでもOK
◎境内に灰皿が用意されている
◎イヌの散歩も大丈夫
◎ゲイカップルの結婚式も頼まれたらOK
第4章 神社のイベント新聞報道からたどる、歌舞伎町の町おこし
◎なぜ歌舞伎町は歌舞伎町という地名なのか
◎「歌舞伎町」になったのは、昭和23年(1948年)
◎繁華街がすたれるなかで、なぜ歌舞伎町は生き延びたのか
◎「歌舞伎町」という言霊パワー
◎「鎮守の杜まちかど博物館」の昭和の映画ポスター展示
◎昭和時代の戦車写真を「カッコイイ」という平成っ子
◎「我が家のお雑煮」を展示したら「家族」が見えてきた
◎サクラソウ 植木屋さんが店を構えていた職人の街の名残
◎稲荷鬼王神社に平将門が祀られていたことがあるって!!
付 録 江戸時代から続く――十二支授けの霊験
◎お土産品のマスコットではなく、干支のご利益が込められたお守り
◎稲荷鬼王神社の「子」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「丑」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「寅」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「卯」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「辰」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「巳」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「午」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「未」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「申」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「酉」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「戌」年の干支由来
◎稲荷鬼王神社の「亥」年の干支由来
プロローグ 神様と遊ぼう――社があなたを待っている、そこは新宿歌舞伎町
◎「道義的繁華街」構想から生まれた東急歌舞伎町タワー
新宿歌舞伎町といえば、いわずと知れたディープな歓楽街。2023年4月14日には、地上48階、高さにして225メートルの東急歌舞伎町タワーがオープンしました。ホテルとエンターテインメントの複合施設です。オープン以来、平日は約2万人、土日祝日は3万5000人が訪れ、開業後約1か月の5月22日には来場者数が100万人を突破するという人気ぶり。なかでも外国人の来店が多く、人気があるのはタワー2階にある「歌舞伎横丁」です。ご当地グルメの小さな店が並び、週末には、ねぶた祭など日本の祭りの踊りがステージで披露され、飛び入りで一緒に踊ることもできます。
タワーの前には路上ライブができる青空ステージがあり、エンタメ文化の世界配信も視野に入れています。
「歌舞伎町」が誕生してわずか75年でここまで来ました。
この地が「歌舞伎町」という地名になったのは、昭和23年(1948年)4月1日、終戦後3年目のことです。第2次世界大戦で焼け野原になった新宿で立ち尽くしていた役人のところに、敗戦からわずか 4日後に、角筈1丁目北の町内会長・鈴木喜兵衛が「復興計画書」を持って訪ねてきました。新宿に歌舞伎劇場「菊座」を誘致し、劇場や映画館を中心とした娯楽の街を建設しよう、商店街も呼び込んで「道義的繁華街」をつくろうと提案したのです。
「道義的繁華街」とは、お客の立場になって商売をするという意味です。
このポリシーに基づいてコマ劇場や映画館街が建設されました。「歌舞伎町」と命名したのは、早稲田大学教授で工学博士の石田栄輝です。
◎歌舞伎町のど真ん中で睨みを利かせる稲荷鬼王神社
命名されてわずか75年で、「歌舞伎町」は世界にその名を知られる街になりました。JR新宿駅の乗降客は日本一(JR東日本調べ)。今後、ますます発展していくのは間違いありません。もちろん悪質なキャッチがいたりといったダークな面もありますが、警視庁のHPによると犯罪は年を追うごとに減少しています。
その繁栄を陰で護り、厳重に警備しているものとして紹介したいのが、歌舞伎町のど真ん中に位置している不思議な神社です。グーグルマップでその界隈の地図を出しても名前が出てこない小さな神社。稲荷鬼王神社です(ピンポイントで引けばもちろん出てきます)。
「鬼の王」の力を持つ神様を御祭神とするたいへんパワーの強い神社で、300年以上もの長きにわたってこの地を守護してきました。稲荷神社に、鬼王権現を勧請して合祀したため、この名があります。まだ、新宿という地名もなく、この一帯が大久保村と呼ばれていたときから鎮座している古い古い歴史を持った神社です。
世襲神社で、宮司は代々大久保一族出身、現在の宮司は第16代目です。大久保村一帯の神社を大久保家が守っていて、平将門をお祀りしていたという伝説もあります。新宿駅から見るとちょうど鬼門(艮)に位置していて、悪鬼が入ってこないよう睨みを利かせています。
一方で、参拝者に対してとってもフレンドリーです。歌舞伎町の人々の心のオアシスとして、メンタルの側面から支え、支援しているのかもしれません。
◎神様は参拝者を大歓迎「一緒に遊ぼう!!」
なかでもめずらしいのが、社殿に神様と遊ぶための神具が用意されていること。それが、なんというか唐突なものなのです。
アフリカの雨乞いのための楽器だったり、自然石でつくった石琴であったり、干支の霊獣の木彫り像であったりです。木彫り像は子どもがまたがって遊ぶのにちょうどいいサイズで、木馬のようによく乗っかる子どもがいるとか。極め付きはネットで落札したという鬼の置き物三体です。これは新聞(東京新聞ウェブ版、2019年9月15日付け)で話題になりました。記事にこうあります。
「『鬼』の神社だから、もっと鬼の像を置いては――。参拝者のそんな声を受け、新宿区歌舞伎町にある『稲荷鬼王(きおう)神社』が鬼の像三体を新たに購入した。ネットオークションで落札したのが、現代らしい。(中略)全体の高さが百四十センチほどある『天女を抱える鬼』『焼き物の鬼』『香炉を持つ鬼』の三体……」
御祓い(御祈祷)をお願いして、社殿に上がると、「神様と一緒に遊んでください」と大久保直倫宮司がにこにこして勧めてくれます。宮司みずから雨乞い楽器を解説付きで演奏して(?)くれます。
大久保宮司は、代々申し送りされている大久保家の伝統に則って神社を運営しています。神社本庁が設立されたのが昭和21年(1946年)ですから、大久保家のほうがずっと歴史が古い。したがって、神社本庁が後追いで決めた神社についての決まり事より、大久保家のほうが正統といってもいいかもしれません。
「神様は一緒に遊ぶことを喜ばれます。音を楽しんで楽器を触ってください」と大久保直倫宮司。
そんな姿勢は、社殿ばかりでなく、境内の開放のしかたにも表れています。
境内の片隅には灰皿と折り畳み式の椅子が置かれています。タバコを吸える場所が狭められているいま、これはありがたいのではないでしょうか。ペットの散歩も大丈夫。「ペットは家族ですから」が宮司の口癖です。お願いすれば、夜の御祈祷もOKです。歌舞伎町のど真ん中でほっと一息つける場所として機能しています。しばらく境内にいて、観察していると、鳥居の前まで来ると、ただ通り過ぎるのではなく、ちょっと立ち止まって合掌していく人もいます。それが型通りのお辞儀ではなく、社殿に念が届きそうなキリリとした合掌と拝礼。若いサラリーマンが多かったです。
地方に行くとこうしたフレンドリーな神社はけっこうありますが、都会の神社としてはめずらしいです。