仏教心理学  (2022年5月新刊)

   ――意識バイアスから自由になるための六つのメソッド

   西田 隆男 著 (西田みどり 編集)

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 ◎本書について
  「仏教」という古めかしい認識バイアスから解放し「認識心理学」という視点で捉え直した書。

仏教というと、寺院や仏像、念仏や御利益信仰、葬儀や墓地などが想像されます。日本文化の古くさい印象が支配的です。しかしそれは、仏教というものの一面に過ぎません。本来仏教を歴史と経文等から学術的に調べると、人間の心の作用を正確に捉え、苦痛のない充実した生き方を問いかけてきたブッダの、世の中を生き抜くための、いつでも真新しく感じる知恵の宝庫であることが見えてきます。本書は、その仏教に包含されているすぐれた認識心理学的内容を解説したものです。著者は「仏教とは拝んで願い事をかなえてもらう宗教ではなく、自分を統制する力と、外界の出来事を正確に解釈するものの見方を獲得することを目的としており、そのための方法も用意されている」として、一般的なご利益信仰や葬式仏教といった日本の仏教のイメージを、仏教伝来の歴史をたどることで覆し、同時に現在注目されている認知心理学と仏教の共通点を示して心の構造を解剖し、意識バイアスから自由になる方法を「六つのメソッド」として紹介しています。仏教という講義の常套句として「無常」「無我」「空」「縁起」「唯識」などのむずかしい用語が飛び交いますが、それらが、現代人に十分に納得できる解説がされていて、「仏教」を「心理学」という新しいイメージで捉え直した書です(「寺小屋」という市民グループが開催した著者による三回目「自由と教育―仏教心理学の視点から」の講演録を編集)。

◎著者紹介
 西田隆男(にしだたかお)
 1954年東京都出身。心理学者。公認心理師、学校心理士スーパーバイザー。NPO法人埼玉ダルク理事長、一般社団法人無料塾ココロ理事。現在、地域での中学高校生への学習支援を中心に子ども応援と若者の居場所づくり、および相談業務(カウンセリング、コーチング)の活動をしている。
 専門:教育臨床、心理療法
 主な著書・訳書・論文:『ストレスを力に―セルフコーチング』(知玄舎刊)『思春期の教育相談30[ズバリ答えます]』(同)『コロナ禍という戦災――戦争とプロパガンダ:作られた[物語]を超えて』(同)、『現代の教育危機と総合人間学』(共著、総合人間学学会)『共依存―自己喪失の病』(共著、中央法規出版)、『JUST FOR TODAY―薬物依存症とはなにか』(編著、ダルク刊)、『当事者研究―新しい自己発見の方法』(編著、知玄舎刊)、『霊性の哲学』(訳書、知玄舎刊)『マインドフルな子育てのためのワークブック』(訳書、同)など。主な論文「思春期の生きづらさへの教育哲学的アプローチ」、「心理臨床から見えてくる思春期のメンタルヘルス」など多数。
◇編集人プロフィール
 西田みどり
 編集者・著述業。文学博士。2006年、「まことと救世主――久米邦武の比較文化論」で中外日報社・涙骨賞受賞。芝浦工業大学、学習院大学、大正大学等の講師を経て現職。著書に『〈型〉で書く文章論』『論理的文章作法』『[異界見聞録6]平田篤胤著「勝五郎再生記聞」現代語超編訳版』『[当事者研究]新しい自己発見の方法――熊谷晋一郎東大准教授による高校での当事者研究』(編集著)(以上、知玄舎)、『サイババ超体験』『抱きしめる聖者アマチの奇蹟』(以上、徳間書店)など多数。


●目次

 まえがき
第一章 「自由」って、そもそも何だろう
◎「自由」とは、自分が好き勝手をやっていいということではない
◎多様性社会での「自由」確保には自己統制力が必要
◎仏教は「心の科学」であり、神は介在しない
◎寺院に祀られている「菩薩」は悟りを求めて修行した人間で「神」ではない
◎「悟り」とは思い通りにならない人生を生き抜く智慧のこと
第二章 「唯識」と「認知心理学」
◎世界は「関係性(縁)」で成り立っている
◎「無常」とは「あらゆるものは常に変化している」という意味。「むなしい」という意味ではない
◎「無我」とは「関係性のなかで自分というはたらきがある」ということ。「自分がない」と言っているのではない
◎「縁起」とは「物事は関係性によって生じ、さらなる関係性によって展開していく」ということ
◎「空」とは「関係性によっていまここにあるだけだ」という状態。「ない」という意味ではない
◎「唯識」とは「外界の出来事はニュートラルで、ただ自分がそう解釈しているだけ」ということ
◎「転迷開悟」とは「迷いを転じて悟りを開くこと」
◎「唯識」と「認知心理学」は行き着いたところが同じ
◎「唯識」は「ただ識(心のはたらき)だけがある」という思想
◎認知がゆがむ三つの要因
第三章 私たちの意識はプロパガンダされている
◎プロパガンダとは宣伝や広報で人の思考を乗っ取ること
◎私たちは洗脳されやすい
◎西洋的な自由の概念は「リバティ」と「フリーダム」
第四章 仏教は心をキレイに保つためのメソッド
◎仏教は心理改善・開発プログラム
◎日本の仏教には翻訳経典の限界がある
◎日本の仏教は民衆ではなく国家に伝わった
◎日本の仏教は国家の安定と国民の管理に使われた
◎仏教への認知のゆがみは「国家伝来」と「戸籍活用」が関係
◎翻訳で生じた誤謬
第五章 生老病死からの解放――ブッダが目指したもの
◎人間が老い、病み、死ぬことを知らなかったブッダ
◎物質的に恵まれたブッダの暮らしは、いまの私たちも同じ
◎悟りに至ったブッダは、死ぬまでの四十五年間、弟子をつれて行脚の日々を送った
◎ブッダの生涯はあべこべ。地位財産を捨てるところから出発している
◎ブッダは不死や不死身になったわけではない
◎仏教は悲観主義ではなく「苦」から自由になる方法を提示している
◎仏教は無神教。独力で自由を目指している
第六章 唯識と認知心理学
◎「唯識三十頌」は唯識を三十の詩句にまとめたもの
◎「すべては心の展開である、実体として存在しない」
◎黒澤明監督の映画「羅生門」と認知心理学の共時性
◎人工知能(AI)の情報処理は人間の認知過程をパターン化したもの
第七章 マナ識とアーラヤ識の発見
◎感覚器官から入った情報が意識をつくっていく
◎「マナ識」の自己執着心は四つに分類される
◎我痴――「このステキな服を着ればあの人が私を好きになってくれるかも」
◎我見――「私がここにいて物事を考えているのだから、私は間違いなくあるのだ」
◎我慢――「あの人より自分のほうが上、私はスゴイのよ」
◎我愛――「彼女は俺のものだ、だれにも渡すものか」
◎アーラヤ識はマナ識を支配するもの
◎仏教はなぜアーラヤ識の存在がわかったのか
◎アーラヤ識は地底水脈の暴流のごとく意識の底を流れている
第八章 マナ識、アーラヤ識を作り出す「四苦八苦」
◎ドゥッカの蓄積がマナ識をつくる
◎怨憎会苦――嫌なヤツと一緒にいなくてはならない苦しみ
◎愛別離苦――自分の命さえ殺してしまうアーラヤ識のパワー
◎求不得苦――努力しているのに手に入れられない苦しみ
◎五蘊盛苦――私たちは苦しみを盛りつけた皿のようなもの
◎では、どうしたらいいのか
第九章 煩悩(ネガティブバイアス)の六つの特徴
◎煩悩とはネガティブバイアスのこと
◎特徴:①貪り煩悩――「まだ十兆円しか貯金がない、もっと欲しい、まだまだ足りない」
◎特徴:②怒り(瞋り)煩悩――「サバイバルの原動力だけど使い方を間違えると……」
◎特徴:③痴煩悩――「物事の理がわからない。自分がアホであることを知らない」
◎特徴:④慢心煩悩――「お釈迦様の手のひらの上で威張っていた孫悟空」
◎特徴:⑤疑い煩悩――「あの人の言うことちょっと変だけど有名な人だから……」
◎特徴:⑥悪見煩悩――「少年犯罪は増え続けている!」(実は減少している)
第十章 キレイな心(ポジティブバイアス)の十一の特徴
◎キレイな心とは、どんな心の状態か
◎キレイな心:①信――見極めたうえで信頼する
◎キレイな心:②慚・③愧――「自分の行いを恥じる、他者に行ったことを恥じる」
◎キレイな心:④無貪――「競争しないで、自分のために努力する」
◎キレイな心:⑤無瞋――「反応しなければ、不快も怒りもない」
◎キレイな心:⑥無痴――「智慧が育てば、愚かな痴は消えていく」
◎キレイな心:⑦勤――「シッダールタ王子は勤め励んでブッダとなった」
◎キレイな心:⑧安――「心がスキップしているような楽しさをいつも感じている」
◎キレイな心:⑨不放逸――「放逸=勝手気儘は実は苦しいもの。自分による統制こそ自由」
◎キレイな心:⑩行捨――「認知のゆがみがなくなり偏見も差別も消えた」
◎キレイな心:⑪不害――「完璧にはできなくても、常に他者を慮ること」
◎善に行きつくためのメソッド
第十一章 キレイな心に至る六つのメソッド「六波羅蜜」
◎心をキレイにする六つの方法
◎「布施行」は心を鍛えるエクササイズ
◎「持戒行」は自制心を鍛えて心を「キレイ」に導く
◎「忍辱行」は我慢すればいいということではない
◎「精進行」は目標設定が大事
◎「禅定行」はマナ識とアーラヤ識の介入を阻止することに役立つ
◎「智慧行」とは仏性を花開かせて悟りへと至る行
 あとがき


◇本書について
 
 本書は、二〇二二年一月三〇日(日)、埼玉県飯能市の古刹、竹寺で行われた心理学者・西田隆男氏の現代心理学講座「自由と教育―仏教心理学の視点から」をベースに構成したものです。
 講座を主宰したのは、教育をテーマとした学習会を不定期で開催している「寺小屋」という市民グループです。スタッフの方によると、子どもでも大人でも誰でも気軽に参加できて、コロナ下においてもさまざまなくふうをすることで人と人とが直接対話できる機会を作ることが寺小屋の目指していることだということです。
 西田氏の寺小屋での講座は今回が三回目で、一回目は「戦争はなぜなくならないのか――プロパガンダとは」、二回目は「洗脳―マインド・コントロールの原理と技術」でした。そして三回目の今回が「自由と教育―仏教心理学の視点から」です。
 各講座に通底しているテーマは、どのようにすれば子どもたちが自分で問いを発し、好奇心をもって、自分の頭で考えて追究していけるような教育環境を用意できるか、ということです。
 今回の講座では「仏教とは拝んで願い事をかなえてもらう宗教ではなく、自分を統制する力と、外界の出来事を正確に解釈するものの見方を獲得することを目的としており、そのための方法も用意されている」として、一般的なご利益信仰や葬式仏教といった日本の仏教のイメージを、仏教伝来の歴史をたどることで引っくり返しています。同時に、現在注目されている認知心理学と仏教の共通点を述べることで、私たちの心の構造を解剖し、意識バイアスから自由になる方法を「六つのメソッド」として紹介しています。
 なぜ心理学と仏教がくっつくのかと、はじめは首をかしげていた参加者たちも、講演が進むにつれて、自分の自由を阻(はば)んでいるのは、実はほかならぬ自身の意識バイアスだったことに気づいていったようです。
 「無常」「無我」「空」「縁起」「唯識」などむずかしい仏教用語が飛び交う講座でしたが、終了後には複数の高校生から深い内容の質問が寄せられていました。本書はそのときに寄せられた質問へのお答えも兼ねて編集しています。
(責任編集者・西田みどり)


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