心理療法の中のアンビバレンス  (2022年8月新刊) 

  ~「したいけどできない」の解消に向かって~

  デヴィッド・E・イングル & ハル・アーコウィッツ 著
  藤元光世 訳

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  ■POD書籍: \2,100 (消費税別)/(A5変型判330頁 ISBN978-4-4910056-46-3)
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 ◎本書について
 全ての学派の心理療法家が直面してきたクライアントの変化に伴うアンビバレンスを克服し解消する方法を解説した臨床的ガイダンス。

 
アンビバレンス(ambivalence)とは、ある対象に対して、相反する感情を同時に持ったり、相反する態度を同時に示す状態である。「両価感情」、「両面価値」、「両価性」などとも翻訳されている。アンビバレンスは、人間の基本的な経験の一つである。希望や欲望は私たちをそれぞれのゴールへ到達するよう導いてくれるが、その一方で、恐れや懸念がそれを妨げている。最終的な結果として動揺が引き起こされるが、それはしばしば私たちを無力にし、人生を向上させる変化を妨げてしまう。本書は、全ての学派の心理療法家が直面してきたクライアントの変化に伴うアンビバレンスを、臨床心理にとって非常に価値がある構成概念として捉え、それを克服し解消するための具体的な方法を解説した、貴重な臨床的ガイダンスである。著者は米国の著名な心理学者である、デヴィッド・E・イングル博士(2021年死去)とハル・アーコウィッツ博士(2019年死去)。原著は、“Ambivalence in Psychotherapy”(by David E. Engle & Hal Arkowitz, A Division of Guilford Publications, Inc. ISBN978-1-59385-255-9, (c) 2006 Tile Guilford Press,)。訳者は、アリゾナ大学大学院でイングル博士から学んだ臨床心理士、スクールカウンセラー。

著者について

 デヴィッド・E・イングル博士(David E. Engle, PhD)
 アリゾナ州ツーソンで開業している心理療法家で、長年ゲシュタルト療法と体験的療法の指導者をしている。研究と臨床の両方に興味を持ち、数多くの論文を発表している。また「フォーカスト エクスプレッシブ サイコセラピー」(Focused Expressive Psychotherapy)の共著者でもある。イングル博士は、ツーソンにあるアリゾナ大学(The University of Arizona)で教育学とプロフェッショナルスタディーズの夏期講座の講師を務めており、医学部のアリゾナサイコセラピープロジェクトのコーディネーターを5年間務めた。(訳注:2021年に他界)
 
 ハル・アーコウィッツ博士(Hal Arkowitz, PhD)
 ツーソンにあるアリゾナ大学心理学部の准教授。不安障害やうつ病、心理療法を中心とした分野で積極的に研究をし、出版をしてきた。また、臨床業務も継続している。アーコウィッツ博士は「ジャーナル・オブ・サイコセラピー・インテグレーション(Journal of Psychotherapy Integration)」の編集者を10年間務めた。また、「認知療法の包括的ハンドブック」(Comprehensive Handbook of Cognitive Therapy)と「精神分析療法と行動療法:統合に向かって」(Psychoanalytic and Behavior Therapy: Toward an Integration)の二冊の共著者でもある。(訳注:2019年に他界)
 
訳者について
 
 藤元光世(Teruyo Fujimoto, MA):臨床心理士・公認心理師
 アリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学ファミリー・スタディーズで人間の発達と家族問題について学び理学士号(BS)を取得。その後、アリゾナ大学大学院カウンセリング・アンド・ガイダンス修士課程で文芸修士号(MA)を取得。このとき夏期講座の講師を務めていたデヴィッド・イングル博士と出会い、彼の率いる体験的ゲシュタルト療法のグループに参加する。卒業後、アリゾナ大学大学院教育心理学部博士課程に進むが、日本への帰国に伴い中退。帰国後は、大学や国立看護学校の非常勤講師をする傍ら、大学の学生相談室と精神科病院のデイサービスで臨床心理士として勤務。現在は、静岡県でスクールカウンセラーをしている。


◎――――――目次

 推薦文
 まえがき
 謝 辞
第1章 抵抗とアンビバレンスの概要
 定義
 抵抗とアンビバレンスの発現
 心理療法の中の抵抗とアンビバレンス
 心理療法の中の抵抗とアンビバレンスに関連した行動
 医療とヘルスケアの中の抵抗とアンビバレンス
 ヘルスケアの中の抵抗とノンアドヒアランス(消極的治療参加)を反映している行動
 自発的な変化の中の抵抗とノンアドヒアランス
 まとめ
第2章 抵抗とアンビバレンスの理論
 精神分析的な抵抗の見識
 認知行動理論による抵抗の見識
 人間主義的―体験的アプローチの抵抗の見識
 家族システムアプローチの抵抗の見識
 リアクタンス理論
 構成主義理論
 統合
 まとめ
第3章 抵抗性アンビバレンスの統合モデル
 抵抗と不遵守に関連している自己スキーマ
 自己スキーマ間の不一致としてのアンビバレンスと抵抗
 まとめ
第4章 抵抗とアンビバレンスの測定とアセスメント
 自己報告式質問紙
 直接観察に基づく方法と測定
 リアクタンスの測定
 抵抗性アンビバレンスをアセスメントするための定性的(質的)方法
 まとめ
第5章 抵抗性アンビバレンスに取り組むアプローチの概要
 ボイス・ダイアログ法(Voice Dialogue)
 ゲシュタルトアプローチ
 サイコドラマ(心理劇)
 ソリューション・フォーカスト・カウンセリング(解決志向療法)
 評論・所感
 2つの椅子アプローチ
 動機づけ面接法(Motivational Interviewing)
 まとめ
第6章 2つの椅子アプローチ パート1
 ステップ1:アンビバレンスのマーカーの識別
 ステップ2:実験の準備
 まとめ
第7章 2つの椅子アプローチ  パート2
 ステップ3:2つの椅子による対話
 ステップ4:解消
 事例解説
 まとめ
第8章 動機づけ面接法 原理と手法
 動機づけ面接法とはなにか
 動機づけ面接法の4つの原理
 動機を高めアンビバレンスを解消する手法
 まとめ
第9章 動機づけ面接法の臨床的応用
 MIの使用に関するガイドライン¹
 うつ病へのMIの拡張使用の事例
 不安障害へのMIの拡張使用の事例
 まとめ
第10章 アンビバレンス・ワークと他の心理療法アプローチとの統合
 独立した治療法としてのアンビバレンス・ワーク
 アンビバレンス・ワークを他の心理療法と共に使用する
 アンビバレンス・ワークとCBTを統合するに当たっての予備研究
 2つの椅子によるアンビバレンス・ワークとCBTとの統合事例
 まとめ
付 録 抵抗に関するさまざまな理論の比較
 精神分析療法
 認知行動療法
 人道主義的-体験的心理療法
 家族システム心理療法
 リアクタンス理論
 構成主義的心理療法
 訳者あとがき


 まえがき
 
 アンビバレンスは、人間の基本的な経験の一つである。希望や欲望は私たちをそれぞれのゴールへ到達するよう導いてくれるが、その一方で、恐れや懸念がそれを妨げている。最終的な結果として動揺が引き起こされるが、それはしばしば私たちを無力にし、人生を向上させる変化を妨げてしまう。
 驚くべきことに、アンビバレンスは調査や臨床研究において、ほとんど注目されてこなかった。私たちは、アンビバレンスは臨床心理にとって非常に価値がある構成概念だと信じている。アンビバレンスは、なぜ人々が変化するのか、あるいはしないのかを理解する手助けをしてくれるのである。私たちはアンビバレンスを解消する支援をすることによって、人々のポジティブな変化を著しく促進させることができると確信している。ひとたびアンビバレンスが解消されたならば、変化の作用は容易に加速する。これらのことから、私たちはクライアントの変化を促進するために、アンビバレンスを理解し、支援するための本を書こうと決心したのである。
 アンビバレンスという構成概念が比較的ネグレクトされてきた一方で、抵抗や不遵守といった構成概念は文献に多く散見している。私たちは、なぜ人々が変化に対して「抵抗」するのかについて言及しようと試みる代わりに、その論点に対してもっとざっくりとした質問を提示してみた。―「なぜ人は変わらないのか?」この質問は、「抵抗」や「不遵守」という言葉の裏にあるクライアントに対する上から目線や、その言葉に関連付けられる多くの古い理論とは無関係である。そして、この質問は、我々にもっと広い視野でその答えを探すことを可能にしてくれるのである。「抵抗」として扱われてきた現象の多くは、アンビバレンスとして捉えることによって、より良く理解できるという重要な結論に私たちは辿り着いた。その結果、抵抗をアンビバレンスとして鋳直すことにより、その本質についての情報を読者に提供しようと試みたのである。
 抵抗と変化は、単に同じ硬貨の表裏なのではない。「抵抗」というのは、ほとんどの場合、変化への障害であると同時に、変化への欲望を含んでいる積極的な葛藤のプロセスである。私たちは、クライアントのアンビバレンスを理解して、それに取り組むことは、人々の変化を支援するための決定的な要素であると信じている。
 心理療法の統合という流れを受け継いで、私たちはそれぞれの理論がもたらす貢献だけでなく、異なる理論であっても、抵抗とアンビバレンスを理解して取り組もうと試みる、共通認識を探ってきた。各々の理論は、一匹の象の1つの側面を見ているにすぎず、未だ象の全貌は、私たちには理解できていないのである。抵抗への私たちのアプローチは、その象の全貌を見ようとする試みなのであるが、だからと言って「象の全貌アプローチ」などと呼ばれることがないよう切に願っている。私たちは、むしろこれを「統合的アプローチ(integrative approach)」と呼んでもらいたい。そして、臨床家と研究者双方が、この本を有益だと思ってくれることを期待している。

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