山師入門 登山で見つけよう大地の宝   (2013年新刊、6月中旬発売)


  -山ヤさん、私を見つけて-

  成谷 俊明 著 

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  四六判192頁(内、巻頭32頁フルカラー)2013年6月15日初版発行 定価:1,470円(税込)
  ISBN978-4-434-18019-8 C0047 \1400E 発行:知玄舎/発売:星雲社
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  「山師」とは……山中の鉱石・鉱脈(宝)を探す人。

  ようこそ、新アウトドア活動・山師の道へ。
  宝の山はあなたの気づきを待っています。
  体力と知力を使いながら安全感覚を磨く、新しい野外活動の提案!!





【正誤表】
本文中誤りがございました。お詫びとともに、
次のとおり訂正をいたします。

P20カラー写真説明「幌尻川」は「音更川」に訂正
P21カラー写真説明「周囲囲」は「周囲」に訂正
P50上から12行「結晶変岩」は「結晶片岩」に訂正
P61上から5-6行「日高の幌尻川」は
          「十勝の音更川」に訂正 
P61写真説明「幌尻川」は「音更川」に訂正 
P71上「モースの硬度表」内
   「3-蛍石」は「3-方解石」に訂正
   「4-方解石」は「4-蛍石」に訂正
 正しい『モースの硬度表』は次のとおり。


P101上から4行「そつもり」は「そのつもり」に訂正
P134上から14行「北東2km」は「北西2km」に訂正
P174 「田上山」の読み 「(誤)たのかみやま」は
   「(正)たなかみやま」に訂正
P175上から14行「保戸野」は「保土野」に訂正
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[編著者プロフィール]

 成谷 俊明(なりや としあき)

  1952.9.11 神奈川県川崎市生まれ。
  東京教育大学農学部農学科卒。
  高校・大学では山岳部、卒業後は教員をしながら登山をする。
  最高到達レベル山行  
  ・山スキー 2.11 谷川岳一ノ倉沢第4ルンゼを上り西黒沢滑降。
          3月末 白馬岳主稜を上り平岩へ滑降。  
  ・岩     9月 屏風岩1ルンゼ~前穂東壁右岩稜。
  ・沢     8月 三面川岩井又沢、胎内川本流。
  ・カナダ  Mt.ロブソン登頂、チャーチルPk.(最北のロッキー)からの縦走。
  1998年頃より鉱物趣味の世界へ入る。新産地の発見や紹介を目指して活動中。
  埼玉県さいたま市在住。


 まえがき

 花や雲の知識は登山の実りを豊かにする。同じ事が石についてもいえる。登山中にものすごくたくさんの石を見ているはずだ。岩登りや沢歩きでなくとも、登山は石の上を移動することが多い。森林限界を超えればそこには石の世界が広がっている。しかしながら、多くの登山者は石からのメッセージを気づかずにいる。当たり前だが、あまりにもったいなくはないか。足下に貴重な宝があるかもしれないのに。私も鉱物マニアの一員となっていろいろ学習したとき、ああ昔この事を知っていればもう少し違う発見・違う歩き方ができたかも、と思ったことがしばしばあった。登山者が鉱物観察の知識を身に付けたとき、山に対する奥深い懐を一つ増やすことができる。しかし、そこにも大切なルールやポイントが存在する。自然公園内の大切な一部分であり、他人の土地、所有物なのである。登山者に石マニアの実態を紹介するとともに、鉱物観察の勘所を伝えたい。  汗を流してたどり着いた山頂からの雄大な眺めに感動するとき、その山並みを生み出した大地の力と水や氷の浸食作用を合わせて見るようにするとその景観の時間的奥行きに気づくだろう。そしてさらにその景色の一部には研究者をあっと驚かせる重要な鍵も隠されているのだ。そして、地質図を眺めて、想像を巡らし、それを現地で確かめる。逆に登山中に浮かんだ疑問や想像を地質から説明できないか考える。そんなアウトドア活動への発展も期待したい。  本書の記述は私の行動範囲が中心になってしまった。北海道・東北・東海・関西・四国・九州については貧弱な情報しか持ち合わせていない。しかし、応用は可能だと思う。地域の登山コースにおける鉱物観察ポイント紹介を作成していただける事を期待している。また、本書は産地ガイドブックではない。登山者へ「鉱物観察の視点の増強」を提案するものである。昔のたよりない記憶をさぐって文章にしたところもあるし、現地に足を運ばずに地図や資料だけで紹介した場所も少なくない。思いついて一気の出版を試みた。そのせいで、「今行ってみたら本に出ていたものと違う」こともあるはずだ。鉱物観察はそんなものだと許していただきたい。利用させて頂いた資料はネットのアドレスも含め示すことにした。ときどきウソ情報が発信されることもあるので注意してもらいたい。  もうひとつ、この世界に入って気づいたことの一つに鉱山と登山との関わりがある。意外に知られていない鉱山開発と登山の関係をいくつか紹介したい。  ひたすら山を登った若き日、今はじじいの水晶堀り。どちらも半端ものに終わったが、登山と鉱物観察の境界領域の紹介をすることで、今までにお世話になったり、ご指導いただいたりした方々へのささやかなお礼になると考えた。登山をしているときの自然観察の一助になれば幸いである。


目次

(巻頭)写真で見る鉱物・鉱山 6

1.鉱物の世界-あなたを待っている 33

(1)宝が眠っている 33
(2)宝の出すサイン 33

2.鉱物科学の学会とコレクター(マニア) 35

(1)新鉱物の記載と日本新産鉱物の報告 35
(2)「標本は見られてこそ価値があり」 36
(3)様々なマニア 37
(4)産地の荒廃 39

3.宝の兆候をつかむ-情報探索のヒント 41

(1)宝は特殊な地点に 41
(2)ズリの発見 42
(3)石垣 43
(4)プール(排水処理施設) 43
(5)坑口や選鉱場跡 43
(6)作業道と索道 45
(7)地名 46
 山師のための必須アイテム(1) 47

4.大発見へのヒント-地質別ポイント 48

(1)蛇紋岩地帯 48
(2)蛇紋岩地帯中のメランジュ 50
(3)翡翠 51
(4)花崗岩類 53
(5)ペグマタイト 55
(6)火山 59
(7)流紋岩 60
(8)石灰岩  64
(9)スカルン 64
(10)酸川・赤茶けた岩 66

5.鉱物の基礎知識-その代表者達 67

(1)水晶 67
(2)日本式双晶 71
(3)黄鉄鉱 72
(4)閃亜鉛鉱  73
(5)ザクロ石 73
(6)方解石 74
(7)沸石(ゼオライト) 75
 山師のための必須アイテム(2) 77

6.登山探索のヒント-地方別、耳寄り情報 78

(1)阿武隈・山形以外の東北 79
(2)阿武隈山地 88
(3)山形県の山 99
(4)新潟県北部 108
(5)魚沼と奥只見 114
(6)上越国境の山 121
(7)日光周辺  127
(8)奥多摩・奥武蔵・奥秩父 137
(9)金峰山周辺 143
(10)丹沢 149
(11)北アルプス 154
(12)南アルプス 165
(13)更に西南の地域 173
 安全対策 175

7.鉱業権(資源の発掘)とこれからの課題 176

(1)鉱業権 176
(2)産地の保全と趣味の拡大 177
(3)産地情報の収集、集約とその利用 179

参考文献 180
索引 185
あとがき 190



 あとがき

 出版が後半に入った頃から改めて「登山の魅力」について考えることが多くなった。なぜ多くの人が登山に惹かれ、一つの山行の後に、別の山へ行きたいと思うのだろう。「充実感」、「達成感」の中身は何なのだろう。登る、山頂、下る、の定型を繰り返す中で登山者の心になにが起きているのだろう。自然の中で体を動かす爽快感、行動とともに風景が変化する主体的躍動感、雄大な景観の一部に自分が歩くことによって参加している自然との一体感、「思い出コレクション」等々……。自分はただ懸命に山へ向かった時期もあった。今思うと家族内や自分の周りからの精神的圧力を無意識下に受けながら、必死に自分自身を確立しようとする営みだったのかも知れない。
 家庭を持ち仕事も忙しくなる中で、しだいに厳しい登山からは離れ、きのこ採りや水晶堀に関心が移っていった。それでも一生の趣味として決めた登山にはこだわりがあり、山スキーなどの山行は維持していた。最初はやや面白半分で書き始めた。これを書けるのは私しかいないという思い入れがあった。書くことによって色々覚えたりすることも多かったし、曖昧だったことがはっきりして好調だった。書き進むうちにいろいろの方から資料や情報を頂いたりした。そうすることで次第に「出版」という形にしないと引っ込みがつかなくなってきてしまった。それでも写真の借用や資料の提供などで皆さんの好意を受けて前進する感じがなんとも快いものがあった。それは山頂に近づくとき一歩一歩、歩く度に視界が広がってゆくあの感じに似ていた。
 今までの登山、鉱物採集を振り返るとなんと自分は幸運に恵まれた人間なのだろうと思う。今回の出版に際してもそれを強く感じる。少し行きづまったとき、ふっともらした言葉に反応してくれた友人の一言から新しい視点が見えてきたり、思わぬ資料が手元に届いたりということがとてもたくさんあった。私の幸運とは裏腹に不運のために天国へ旅立った仲間が思い出される。残された者が何をすべきなのか問われているように感じたこともあった。彼らに対する言い訳としての出版なのかもしれない。残された時間は少ないが、「山師同人(?)」代表として山岳地帯の鉱山探索に残りの人生をつかうつもりだ。「情報の一人歩き」を心配して発信することをためらうより、人間の好意を信じて出版という形で世に問いたいというのが今の気持ちだ。内容的には中途半端ともいえる。山の本でもなければ石の本でもない。境界領域といえば聞こえはいいが、どっちつかずのものになった。もう少し時間をかければ実地探査や資料の入手でさらに充実したものになったかも知れない。でも一人の努力では限りがあり、現時点で発信することに意味があると考えた。
 本書は様々な人々の協力、善意の上にできあがった。山の写真を提供して下さった方々、特に菊池哲男さん、高橋重さんにまず感謝をしたい。そしてデジタル鉱物図鑑からの写真借用を許可して下さった方々、鉱物写真の撮影や提供でお世話になった善財一氏。特に善財一氏の協力がなければ貧弱・粗末な出版物で終わっていただろう。家族の協力も有り難かった。表紙・カットの作成、パソコン操作、校正等々、本当にありがとう。感謝、感謝の出版である。私にとってかけがえのない人生の宝物になった。

  2013年5月


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