中央アメリカ音楽の旅    (2013年11月新刊)    

  −「ある恋の物語」−


  早川智三 著

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  四六判 256頁 2013年11月22日初版発行 定価(本体2,700円+税)
  ISBN978-4-434-18587-8 C0073 \2700E 発行:知玄舎/発売:星雲社
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 「運河の国」パナマの音楽、「中米のスイス」コスタ・リカの音楽、「火山と湖の国」ニカラグアの音楽、「中米の小国」エル・サルバドルの音楽、「知られざる国」ホンジュラスの音楽、そして「マリンバ大国」グアテマラの音楽の特徴と魅力、代表曲とその歌の大意、演奏家、作曲家、そして魅力的なレコード・CDを集大成した、中央アメリカ6ヶ国の音楽を日本ではじめて紹介したガイド本。特に著者が8年間滞在したパナマの音楽については、詳細な解説を展開。マニア必読、必見の書。各国のお国柄についても簡単に述べ、さらに著者の体験記も盛り込むなど、何よりも中南米音楽を愛好している人々のために、著者が心を傾けて書き上げた渾身の著作。
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[著者プロフィール]
 早川 智三(はやかわ ともぞう)

 1939年、埼玉県に生まれる。
 1963年、上智大学外国語学部イスパニア語学科卒業後、(株)日立製作所入社。
 1971年から1979年まで中米パナマ共和国の日立セールス・コーポレーションに勤務。
 その間同社家電製品の販売のため中南米諸国を行脚。
 帰任後も同社の中南米諸国向けの国際業務に従事。
 1999年同社退職後はスペイン語の通訳・翻訳、中南米音楽の解説、執筆などを行う。
 現在さいたま市に在住。
 著書に『アルパの調べと歌』『パラグアイ音楽名曲選』(知玄舎)がある。


■目 次

 まえがき 3

第1章 Panama「運河の国」パナマの音楽

 【1】パナマはなんと言っても運河の国だ 16
 ?Panama Viejo (パナマ・ビエホ) 20

 【2】パナマのポピュラー音楽を世に広めた三人の作曲家 22
1.Carlos Eleta Almaran 「カルロス・エレータ・アルマラン」(1918.5.16−2013.1.16)〜「ある恋の物語」秘話 22
 ?Historia de un amor(ある恋の物語 24
 ?Perdonala Senor (神の許しを) 31
 ?La aparicion(おばけ) 32
2.Arturo ”Chino” Hassan「アルトゥーロ・チーノ・ハッサン」(1911.7.28-1974.2.9)〜ボレロ・パナメーニョを世に問うた作曲家 33
 ?Sonar(ソニャール) 35
 ?Mi ultimo bolero(私の新しいボレロ) 36
3.Ricardo Fabrega「リカルド・ファブレガ」(1905.1.28.-1973.2.10)〜「タンボレーラ」の創作者 37
 ?Bajo el palmar(椰子の木の下で) 39
 ?Aquella melodia(アケージャ・メロディア) 40

 【3】パナマの国民舞踏「タンボリート」と多彩な音楽 42
1.Tamborito(タンボリート) 44
 「タンボリートの特徴」 45
 「タンボリートの踊り」 46
 ***【閑話休題】太鼓の踊り *** 49
  Congos「コンゴス」 49
  Bunde「ブンデ」 50
  Bullerengue「ブジェレンゲ」(Bullarengue「ブジャレンゲ」) 51
 ?El tambor de la alegria(エル・タンボール・デ・ラ・アレグリア) 52
2.Tamborera(タンボレーラ) 54
 ?Guarare (グアラレ) 55
 ?La cocaleca(ラ・コカレカ) 56
3.Mejorana(メホラーナ) 58
 「メホラーナに使用される楽器」 61
 「メホラーナの踊り」 66
***【閑話休題】サローマについて*** 68
4.Punto(プント) 69
5.Cumbia(クンビア) 70
 「クンビアの語源」 71
 「クンビアで使用される楽器」 72
 「クンビアの踊り」 72
6.Pasillo(パシージョ) 74
 ?El suspiro de una fea(醜い女のため息) 75
7.Danza(ダンサ) 77
 ?La reina roja(pescao)赤組の女王(ペスカオ) 78
***【閑話休題】パナマのクーナ族の音楽*** 81

 【4】パナマを代表する演奏家たち 83
1.オルガン奏者 83
(1)Avelino Munoz Barrios 「アベリーニョ・ムニョス・バリオス」(1912-1962) 84
(2)Lucho Azcarraga「ルーチョ・アスカラガ」(1912-1996) 85
(3)Toby Munoz「トビー・ムニョス」(1944-) 87
2.アコーディオン奏者 91
(1)Victorio Vergara「ビクトリオ・ベルガーラ」(1944-1998) 91
(2) Dorindo Cardenas Gutierrez「ドリンド・カルデナス・グティエレス」(1937-) 92
(3) Dagoberto“Yin “ Carrizo「ダゴベルト”ジン”カリーソ」(1939-) 93
(4) Osvaldo Ayala「オスバルド・アジャラ」(1952-) 95
 ?Anhelos「アネーロス(あこがれ)」 97
3.バイオリン奏者 99
(1)Tin Barrios「ティン・バリオス」(1912-) 99
(2)Tobias Plicet Moreno「トビアス・プリセート・モレーノ」(1906-) 100
***【閑話休題】黒人バンドネオン奏者ホアキン・モーラ*** 102

 【5】パナマを代表する女性歌手たち 104
1.Sylvia de Grasse「シルビア・デ・グラッセ」(1921-1978) 104
2.Marta Estela Paredes「マルタ・エステラ・パレデス」(1927-2006) 105
3.Lucy Jaen「ルーシー・ハエン」(1928-2011) 106
4.Ediza Moreno「エディーサ・モレーノ」 107
5.その他パナマを代表する女性歌手 108

 【6】パナマを代表する男性歌手たち 109
1.Ruben Blades「ルベン・ブラデス」(1948-)〜国際的な活動を続ける音楽家 109
 ?Buscando America(アメリカを探し求めて) 111
2.Samy y Sandra Sandoval「サミー&サンドラ・サンドバル」〜パナマの人気ドゥオ 112
 ?La gallina fina (すてきな雌鶏) 113
3.その他パナマを代表する男性歌手 114
 ?Mi pais(私の国) 115

 【7】パナマ音楽史上に足跡を残した作曲家たち 116
1.Maximo Herculano Arrates Boza 「マクシモ・エルクラーノ・アラーテス・ボサ」(1859-1936) 116
2.Alberto Galimany「アルベルト・ガリマニ」(1889-1973) 117
3.Victor Cavalli Cisnero「ビクトル・カバージ・シスネロ」(1907-2000) 118
4.Gladys de la Lastra「グラディス・デ・ラ・ラストラ」 118
5.Tony Fergo 「トニー・フェルゴ」(1923-) 119

 【8】民族衣装「ポジェーラ」 120

第2章 Costa Rica「中米のスイス」コスタ・リカの音楽

1.麗しのコスタ・リカ 124
 ?Li nda Costa Rica(麗しのコスタ・リカ) 125
2.国際的な活動を展開するカルロス・グスマン 127
 コンフント「ガビオータ」 127
 ?Soy Tico(私はコスタ・リカ人) 129
3.コスタ・リカでも人気のクンビア 131
 ?Tonta(馬鹿なわたし) 131
4.コスタ・リカにおける音楽の概要 133
(1)外来音楽 133
(2)コスタ・リカ生まれの音楽 138
 Tambito(タンビート) 138
 Callejera(カジェへーラ) 138
5.コスタ・リカを代表する作曲家 139
(1)Julio Fonseca G.「フリオ・フォンセカ・G」 139
(2)Jose Daniel Zuniga Zeledon「ホセ・ダニエル・スニガ・セレドン」 139
(3)Hector Zuniga Rovira「エクトル・スニガ・ロビラ」 140
(4)Jose Bonilla Chavarria「ホセ・ボニージャ・チャバリーア」 141
(5)Manuel Rodriguez Caracas「マヌエル・ロドリゲス・カラカス」 141
(6)Carlos Gutierrez G.「カルロス・グティエレス・G」 141
(7)Mario Chacon Segura「マリオ・チャコン・セグーラ」 142
 ?Asi es mi tierra (これぞ我が祖国) 145
 ?Ticas lindas (美しいコスタ・リカの女性たち) 145
(8)Roberto Gutierrez Vargas「ロベルト・グティエレス・バルガス」 147
 ?La guaria morada (ラ・グアリア・モラーダ) 148
(9)Ricardo Mora Torres「リカルド・モーラ・トーレス」 149
(10)Ramon Jacinto Herrera C.「ラモン・ハシント・エレーラ・C」 150
 ?Eso es imposible (それは不可能なこと) 151
6.国際的な活動を展開したアーティストたち 152
(1)Julia Cortes「フリア・コルテス」 152
(2)Chavela Vargas「チャべーラ・バルガス」 154
(3)その他のアーティストたち 155
7.カリブ海沿岸の音楽 158
(1)Luis Angel Castro「ルイス・アンヘル・カストロ」 158
(2)Walter “Gavitt” Ferguson「ウォルター・ガビット・ファーグソン」 160

第3章 Nicaragua「火山と湖の国」ニカラグアの音楽

1.ニカラグア概観 164
2.ニカラグアの音楽と音楽家たち 165
 ?Tierra nica「ティエラ・ニカ(ニカラグアの大地)」 165
3.民衆の歌い手「カルロス・メヒア・ゴドイ」の音楽 169
 ?Quincho Barrilete (キンチョ・バリレーテ) 170
 ?El Cristo de Palacaguina(パラカグイーナのキリスト) 174
 ?Clodomiro El Najo(クロドミーロ・エル・ニャーホ) 175
 ?Pobre La Maria(哀れなマリア) 177
4.女性カンタウトーラ「カティア・カルデナール」 178
 ?Mariposa de alas rotas(羽の破れた蝶) 179
5.サルサのプリンス「ルイス・エンリケ」 180

第4章 El Salvador「中米の小国」エル・サルバドルの音楽

1.勤勉で親日的な国民 184
2.エル・サルバドルの音楽 185
(1)エル・サルバドルを代表するグループ「トリオ・エルマノス・カルカモ」 185
 ?El carbonero(炭売りの歌) 186
 ?Maquilishuat bajo la luna(月下のマキリシュアト) 187
(2)ポップス歌手「アルバロ・トーレス」 189
3.エル・サルバドルを代表す作曲家 189
(1)Maria de Baratta「マリア・デ・バラッタ」(1890-1978) 189
 ?Can-Calagui-Tunal (Cuando el Sol se pone)(太陽が沈む時) 190
(2)Pancho Lara「パンチョ・ララ」(1900-1989) 192
(3)Lito Balientos「リト・バリエントス」(1915-) 193
4.アグスティン・バリオスの足跡を求めて 194
*【閑話休題】バリオスをピアノで演奏するマリオ・モラーレス* 199

第5章 Honduras「知られざる国」ホンジュラスの音楽

1.ホンジュラス概観 202
2.ホンジュラスの音楽 203
(1)クリオージョ音楽 203
 ?Honduras(ホンジュラス) 203
 ?Tegucigalpa(テグシガルパ) 206
 ?Virgen de Suyapa(スジャパのマリアさま) 207
(2)フォルクローレ音楽 207
 ?Sos un Angel(きみは天使) 208
 ?El bananero(バナナ売り) 210
3.国際的な活動をするギジェルモ・アンダーソン 212
 ?En mi pais(私の国では) 212

第6章 Guatemala「マリンバ大国」グアテマラの音楽

1.グアテマラ概観 216
2.グアテマラの音楽 217
3.グアテマラの国民楽器マリンバ 220
(1)マリンバの由来 221
(2)マリンバの変遷 221
(3)マリンバの発展 221
 ?Luna de Xelaju(チェラフーの月) 223
4.グアテマラの作曲家 226
(1)Julian Paniagua Martinez「フリアン・パニアグア・マルティネス」 226
(2)Jesus Castillo「へスス・カスティージョ」 227
(3)Paco Perez「パコ・ペレス」 227
(4)Jose Alejandro de Leon「ホセ・アレハンドロ・デ・レオン」 228
(5)Ramon Domingo Betancourt Mazariegos「ラモン・ドミンゴ・ベタンコート・マサリエゴス」 229
(6) Rocael Hurtado Mazariegos「ロカエル・ウルタード・マサリエゴス」 230
(7)Alfonzo Torres「アルフォンソ・トーレス」 231
(8)Doris Aghian「ドリス・アギアン」 231
5.マリンバ演奏楽団 231
**【閑話休題】ミルドレドとマノロ、リカルド・アルホーナ** 236
6.グアテマラの今を代表する音楽家Dieter Lehnhoff「ディエテール・レンオフ」 236
***【閑話休題】ベリーズの民族音楽*** 238

 あとがきにかえて:パナマに住んだ8年間 241

 資料:パナマ三大作曲家の主な作品と演奏者 248
 参考文献 255


あとがきにかえて:パナマに住んだ8年間  

 私が社命を受けてパナマに駐在したのは1971年10月30日から1979年11月21日の8年間でした。日本の多くの企業がこの中米の小国に進出するにはそれなりの理由がありました。当時の中南米諸国は極端な外貨(ドル)不足で製品輸入に対してはその門戸を閉じていました。パナマの大西洋岸にコロンという都市がありますが、そこに政府はフリー・ゾーン(自由貿易特区)を設けて中継貿易の拠点としての役割を与えておりました。日本の企業はそのフリー・ゾーンに倉庫を構えて製品を在庫し中南米諸国からの買い付け人(バイヤー)に対し製品販売をしていました。
 私もパナマを活動のベースに中南米各国へ出張で出かけ家を空ける機会が多くなりました。
 中南米(カリブ海諸国も含めて)には独立国家が大小合わせて33ヶ国あります。カリブ海の小さな島々を除いて殆どの国々を回りました。中米諸国は通常はパナマも含めてグアテマラ、エル・サルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタ・リカを指していましたが、これに加えて1981年に英国より独立したベリーズも地政学上中米に含められます。更に南米諸国を含めると世界地表面積の約15%(日本の面積の約54倍)を占め、いわゆる中南米諸国と呼ばれる地域となるわけです。そして出張先ではその国々の音楽に接する機会も多くなり、また行く先々で多くの音楽家とも知り合うことになりました。この小冊子ではパナマの音楽を主に扱いましたが、日本で余り紹介されることのなかったその他の中米諸国の音楽についても簡単に触れてみました。
 ところで、当時のパナマにおける日本人駐在員の休日の過ごし方にはいろいろありました。特にこれと言った観光地があるわけではなく、ゴルフを楽しむ人が多かったと思います。私の場合はパナマから中南米諸国への出張が多かったためにせめて休日くらいは家族と共に過ごそうと考え、また家では出張先で購入したレコードを聴いたりしていました。駐在員の生活はすべが楽しいものとは言えません。仕事上や狭い日本人社会での人間関係のストレスなどからの解放には好きな音楽でも聴いてリラックスすることも必要でした。音楽は私にとって精神安定剤のようなものでした。仕事以外に何か打ち込めるものがないとパナマでの生活はきついものになったと思います。
 私はゴルフをあまりやりませんでした。パナマは一年を通じて気温が高く、特に雨季に入ると蒸し暑さが増しゴルフをするにも体力が必要となるからです。着任早々ゴルフに誘われて初めてゴルフ・クラブを持ちました。運悪くプレーしている時に雨に打たれてしまいました。ホテルに戻ってシャワーを浴びベッドに横になっていましたが、起き上がったときに身体がぐらぐらと揺れました。高熱が出ていたのです。近くの開業医に行きお尻に注射をされました。数日間お尻が痛かったことを思い出します。このような苦い経験がゴルフに対する興味を失った理由のひとつかも知れません。またパナマ国内で合弁による新販売会社を設立しましたが、顧客開拓のために雨の中でも外回りをする日が続きました。ある夜のことトイレに起きましたが血尿がでて大騒ぎしました。翌朝すぐに病院に駆け込み検査と治療を受けました。幸い大事に至らなかったのですが、それ以降パナマの雨に対しては必要以上に神経質になったのかも知れません。また8年間の駐在中に空き巣に3回入られ意気消沈しましたが、それ以外はあまり大きな事件もなく過すことができたと思っています。
 70年代のパナマは政治的にも経済的にも比較的安定していた時期で、中南米各国から多くのトップ・クラスのアーティストがパナマを訪れました。アルゼンチンのボーカル・グループ、「オプス・クアトロ」を初め、パラグアイの「ロス・トレス・デル・パラグアイ」、メキシコからは「ペドロ・バルガス」「ホセ・ホセ」「マルコ・アントニオ・ムニス」、キューバの「エルマノス・リグアル」「トリオ・タイクーバ」「セリア・クルス」、プエルト・リコの「ダニエル・サントス」、エクアドルの女性歌手「パトリシア・ゴンサレス」、コスタ・リカの「トリオ・アルマ・デ・アメリカ」、スペインからは「フリオ・イグレシアス」「ラファエル」「フアン・バウ」、そしてサルサ界の重鎮「ジョニー・パチェコとファニア・オールスターズ」などは思い出に残るアーティストです。
 ところがこのパナマに一大事件が発生しました。南米からパナマ経由で米国に大量の麻薬が送り込まれていることが摘発されました。パナマ政府の重要人物がこれに加担しているというものでした。そして1988年当時のノリエガ国防軍事司令官の進退をめぐり米国とパナマの関係が悪化し、翌年米軍がパナマに侵攻しノリエガ体制を崩壊させました。この時に進出していた日本企業は殆ど撤退しました。さらに中南米諸国が1990年代に入り開放経済に向かとパナマのフリー・ゾーンの地位は相対的に低下しました。しかし現在では以前にも増してフリー・ゾーン全体としての活動は拡大しているとのことであり、また2014年パナマ運河の拡張工事が完成した暁には通行する船舶の数も増え運河よりあがる通航料の収入増も見込めると期待されています。
 パナマ駐在を終えてから早くも30年が経過しました。現在のパナマ市は当時からみると想像もつかないほどその姿が変わりました。まずパナマへの第一歩となるトクメン国際空港は2倍以上に拡大し、シティーに向かう道路も新しく海上に建設されました。
 以前バルボア通りがパナマ湾岸沿いに走っていましたが、海に向かって埋め立て地を建設し緑地帯を作りました。そこを「シンタ・コステーラ」と名づけ自動車道を建設し交通緩和に一役買っています。そして何よりもパナマ湾岸沿いに林立する高層ビル群、太平洋に張り出したプンタ・パイティージャ地区に隈なく建設された高層高級マンション群など全く様変わりの景観は驚きとしか言いようがありません。大きな規模のモダンなショピング・センターもあちこちに出来ました。しかし決して価格は安いとは言えません。
 一歩奥に入ると旧態依然とした生活を強いられている人々のいることも忘れてはいけません。
 またパナマ市内の交通渋滞のひどさは耐え難いものがあります。そもそも自動車の数が道路の面積に対し多すぎるのです。その緩和策として2014年完成目標に幹線道路ビア・エスパーニャの下に地下鉄を通す工事も始まっています。一時的にせよこの地下鉄工事によるあちこちでの道路の一部閉鎖、またスコールが来た時など、交通渋滞に追い打ちをかけています。
 運河の拡張と地下鉄の完成が予定通り実現すれ、2014年はパナマにとって記念すべき年になることでしょう。確かに今のパナマは外国からの投資も得て少なくとも見た目には大変活気を帯びた国と言えます。
 8年間のパナマ駐在は私の人生にとっていろいろな面でやはり特別なエポックだったと思います。異文化との出会い、そして何よりもいろいろな人々との出会いはその後の私の人生を豊かなものにしたと思っています。
 この小冊子では日本ではあまり馴染みでないパナマを中心とした中米5か国の音楽についてまとめてみました。これらの音楽についてはCAMLA(Club de los Aficionados de la Musica Latinoamericana「中南米音楽愛好会」)で一部紹介してきましたが、それをベースにしてさらに詳しく解説したものです。このCAMLAは中南米音楽が大好きな仲村 聰(日本航空)、長谷川 靖(JTB)、関根哲夫(日本航空)それに私の四人が集まり1999年に発足した小さな会でした。また発足当初からメキシコ在住の滝本 昇(法律事務所)よりはしばしばCAMLA宛てにメキシコ音楽のレコードやCDを寄贈いただき実質的には彼も同会の設立メンバーの一人と言えます。
 現在は十数人の愛好家が月に一回集まり好きな音楽を聴いています。残念なことに仲村、長谷川両氏は他界されましたが彼らの遺志を継いで活動を継続しています。そして今回小著を出版するに当たって、今まで見たり聴いたりした音楽や知り合った音楽家たち、そして何よりも中南米音楽を愛好してきた仲間たちに感謝の心を込めて書いたつもりです。
 また私がパナマに駐在していた1970年代より日本企業の駐在員として活躍し、その後パナマに残り第二の人生を送っている日本人たちがおります。彼らは困難な時期を乗り越えて、また快適とは言い難い気象条件のもとで今でも日本とパナマの架け橋となって活動している日本人の侍たち、蓬台雅彦、川鍋盛一郎、津田卓二、工藤一雄、荒屋敷和夫、菅原源治、吉本槙夫(敬称略順不同)に心からのエールを送りたいと思います。
 今回も、前二作に続き知玄舎の小堀英一氏には出版に当たり全面的にご協力いただきました。心から御礼申しあげます。

 2013年10月  早川 智三


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