●千年の輝き−ヤマトタマムシ生育の秘密 (2011年6月新刊)
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芦澤 七郎 著
平成プロジェクト 編著
四六判 144頁(巻末8ページフルカラー) 2011年6月20日初版発行 定価:1,260円(税込)
ISBN978-4-434-15735-6 C0045 \1200E
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聖徳太子の時代から、強靱で目眩く至極の輝きと色彩で人々を魅了してきた、タマムシの羽。
しかし、タマムシの生態は謎。
本書は、知られざるタマムシの不思議な生態を、飼育研究によって明らかにした貴重な記録である。
遥か太古の時を越えて、タマムシ文化の再認識の時が来た。
玉虫(ヤマトタマムシ)は甲虫目の昆虫。緑色に見える羽は、光の角度によって色が刻々と変化する
きらびやかな美しさがあり(玉虫色)、またその羽は堅牢で長持ち。
法隆寺の「玉虫厨子」や新羅時代の古墳皇南大塚(韓国慶州)から発掘された「玉虫馬具」の装飾に使われてきた。
その装飾の技は、現代においては至宝である。
【改訂改題の経緯について】
本書は、2006年5月17日に東京図書出版会から発行された、芦澤七郎著「タマムシは環境が悪いと長生きする」を基に
部分改訂し(基本的に内容に変更はございません)、その後の研究でわかったことなどを新たに加筆したうえ、
平成プロジェクトとともに再構成して改題したものです。
【新刊協力書店様】
ありがとうございます。
タマムシは真夏の7〜8月に産卵し、卵は3〜4週間で幼虫になり 木の中へ食い進み、3年目の6〜7月に成虫になり7〜8月には死ぬ。 これが標準的な一生である。 タマムシは成虫になるとエノキの葉を食べ、やがて交尾し、 メスは産卵して一生をまっとうする。 成虫の寿命は7〜8週間で、オスもメスもそれ以上は生きない。 タマムシは姿かたちが、うりざね型で色が明るい緑色に赤茶色の縦筋が通っていて 金属的な輝きをもち、その美しさゆえに昔から多くの人に好まれてきた。 玉虫の羽は美しさゆえに有名な法隆寺の玉虫厨子のほか、 韓国の新羅時代の衣服に模様として使われたという。 (以上、本文から) |
[著者プロフィール]
芦澤 七郎(あしざわ しちろう)
1932年静岡県富士市生まれ。明治大学卒業。1989年にタマムシの飼育を始める。2005年玉虫研究所を設立。韓国の1500年前の玉虫馬具の複製の為に玉虫1000匹を寄贈。現在、[玉虫を卵⇒幼虫⇒成虫⇒卵]と、室内で飼う事を研究実験中。
[編著者プロフィール]
平成プロジェクト
映画やテレビ番組などのコンテンツ、演奏会、出版、講演会などの企画や実行をすることを主たる目的とする株式会社。各界で独自に活躍している法人や個人が、その組織や枠を越えて共通の目標達成のために結集し、各自の能力を発揮する活動を主宰。映像事業として、日本イラン合作映画製作「風の絨毯」(2003年)、長編ドキュメンタリー映画製作「平成職人の挑戦」(2005年)、長編ドキュメンタリー映画製作「蘇る玉虫厨子」(2006年)、長編映画製作「築城せよ!」(2008年)、日韓合作ドキュメンタリー映画製作「海峡をつなぐ光」(2011年)などがある。
■目 次
本書発刊に当たって 金住則行 3
推薦文 石蔵文信 5
序 文 7
第1章 千年の輝き−ヤマトタマムシ
1 花嫁とヤマトタマムシ 16
2 ヤマトタマムシってどんな虫 18
3 タマムシの種類 21
4 『和漢三才図会』より「たまむし」の項 24
5 タマムシの工芸装飾品 26
6 玉虫色の美しさの秘密 28
7 法隆寺の国宝「玉虫厨子」 31
8 韓国・皇南大塚の玉虫の馬具 35
9 玉虫が取り持つ韓国との縁 37
10 日韓合作ドキュメンタリー映画「海峡をつなぐ光」について 41
11 聖徳太子の時代に海峡を渡ったヤマトタマムシ日韓歴史ロマン 44
第2章 ヤマトタマムシ−生育の秘密
1 タマムシとの出会い 48
2 タマムシのすがた 51
3 タマムシが飼えないだろうか 54
4 飼えないと思われてきた理由 59
5 タマムシを飼う 61
6 タマムシが産卵しない 65
7 飼育2年目に産卵に成功! 68
8 タマムシを殖やしたい 70
9 タマムシが卵から2年で成虫に! 75
10 タマムシが卵から1年で成虫に! 78
11 交尾と産卵 81
12 タマムシの天敵 86
13 エノキにタマムシが群がっていた 90
14 タマムシの幼虫の住まい 92
15 幼虫を室内で飼う 96
16 幼虫が成虫になった 99
17 人工飼育のチップ 102
18 タマムシが足の吸盤に困った話 104
19 ヤモリの脚は吸盤がなくても吸い付く 108
20 タマムシの日常生活 111
21 タマムシは環境が悪いと長生きする 117
22 タマムシ水死事件 120
23 タマムシには肺がない 123
24 タマムシの死 125
25 タマムシは害虫か益虫か 128
26 玉虫雑記 130
あとがき 134
参考資料 現代に見直されつつあるタマムシ装飾の紹介 137
補完資料 タマムシの飼育 138
補完資料 (第2章 16 幼虫が成虫になった) ヤマトタマムシの成長記録 140
序 文
タマムシの飼育について、私の知る限りまとまった記録がないようなので、飼育中にわかった素朴な発見や驚きをそえて書いてみた。
タマムシについてあまり知られていないだろうことを幾つか挙げてみると−、
まず、飼育方法がわかったこと。
次に足に吸盤があること。吸盤の大きさはほぼ円形で、直径1o以下だが役に立っているようだ。
更に、水に落ちて水死しても生き返ること。
また、生きている間、水を飲まないし蜜もなめないこと。
幼虫のとき、環境が悪いと長生きすること。
産卵を確実にさせる方法がわかったこと。
自然界で3年かかる幼虫期間を短縮できたこと。
虫が好きな人ならば、タマムシ(ヤマトタマムシ)を誰でも飼えるようにと、なるべく具体的に書いたつもりである。しかし、まだ解らないところが多いが、マイペースで少しでも観察さえしていれば、解ることが増えるに違いない。
ヤマトタマムシしか飼ったことがないので、ヤマトタマムシ以外のことは残念ながら全くわからない。
あとがき
タマムシを飼うという経験は私にとって貴重なものだった。
50歳代半ばで巡り合ったタマムシは、体質に合った趣味といえる。
まず最初はタマムシを飼ってみよう……、という単純な考えだった。それからは飼うためにはどうするかという計画と実行。計画を立てるための思索、継続するための長期持続方法。
生き物を飼うことは息の長いスローペースで、短期間で結論が出るものではないので、次には何をしたら良いかを考える時間が十分にあった。
新しい事をするには試行錯誤はつきもので、失敗したところで自分の責任で済む。虫小屋1つ、温室1つ作るにしても、置き場所、大きさ、かたち、材質などを考え、設計図を何度も書き直し、材料を買いに行き手作りする。これも楽しみの1つである。
職人は必要とする道具を自分で作ろうとする習性があるので、虫小屋などは当然手作りである。
飼い始めた最初の年に全く産卵しなかったときは、死んだタマムシを解剖して何故産卵しなかったのか、来年の対策はどうしたらよいのかを考えた。図書館で調べても解らない。翌年には成功させなくてはならない。時間はあるのでじっくりと考えた。
新しいことをするには、まず希望・目標を持つ。それから計画を立てる。実行する。反省する。より良い計画を立て実行する。その間に観察を充分に行い、タマムシからヒントを得る。低いハードルでも飛び越える楽しみがある。これらの繰り返しで記録を毎日細かく書きとめるのは当然である。
タマムシを飼うには、産卵するための木を確保する(玉虫飼育のための原木はコナラを多く使っていたが、最近はサクラやエノキを多く使っている)。今は12月に発注して1〜2月に入荷する。それをなるべく乾燥しないように保存して夏の産卵に備える。3月になると6月初旬のタマムシ発生に備えて準備不足がないか、点検する。8月下旬までタマムシは生きているのでその世話をする。秋と冬が閑な時期と言えそうだ。
その他、年間を通してタマムシの加工をしようと思っている。ガラスやプラスチックの中にタマムシの羽を入れて、アクセサリーにするのだ。ピアスにしたり、ブローチにしたり、タイピンにしたり。ようやく出来そうになってきたところである。これも新しい経験なので時間がかかる。
趣味と言い、道楽と言われ、タマムシのことがようやく解ってきたが、まだ解らないことやもっと知りたいことが沢山ある。
刊行にあたり、平成プロジェクトの益田祐美子氏をはじめ、知玄舎の小堀英一氏、沼津市の小林正人氏や藤枝市の玉虫愛好会の皆様、ほか各方面でお世話になり、こころからお礼申し上げます。ありがとうございました。
芦澤 七郎