催眠を使った「護心術」~戦わずして勝つあるがままの極意~ (2015年11月新刊)

   太田 朋宏 著

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  ■電子書籍 定価:[本体1,000円+税]
  ■アマゾンPOD書籍 定価:[本体2,100円+税](A5判207頁 ISBN978-4-907875-18-3)
  2015年11月13日初版発行(電子・POD書籍同時発売、★店舗書店での取扱いはございません)
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  ネガティブな情報から心を護り、生きづらさを解消することで、前向きに生きるための、催眠による護身術の解説書。

  ◎本書について

 現代社会で繰り返されている、目に見えにくいネガティブな情報戦の数々。繊細で神経質な人ほど敏感にキャッチしやすく、生真面目な人ほど真に受けてストレスの要因になりがちな心理的暴力にどのように対処したらいいかを、スクールカウンセラーであり臨床心理士である著者が、その解決策を具体的に解説。心の病を治療する大家と、身体を護ることに秀でた武道の達人、武士の生き方に学ぶことで、心を護るための数々のヒントを紹介。ネガティブな情報から心を護るための術を、心理学やカウンセリングの理論、特に、森田療法と精神分析学を中心に取り入れながら、東洋思想の叡智である「武術」「気」「自然」をキーワードにまとめた書。

◎著者紹介
 太田 朋宏(おおた ともひろ)
 臨床心理士、カウンセリングルームワプラス代表。昭和52年生まれ。千葉県出身。企業におけるEAPプログラムや高齢者向けリハビリ病院での臨床経験を持つ。これまで小中高校合わせて30校近くの公立学校を中心にスクールカウンセラーとして活動している。現代臨床催眠、森田療法、応用行動分析学、精神分析学など様々な心理療法を取り入れ、適材適所の統合的アプローチを研究する中で、主に東洋的な視点から「和」の心理療法を行っている。


■目 次

第1章 ヒポコンドリー社会の到来~不安や恐怖にとらわれる背景~
◎不安にとらわれる社会 9
◎不安でつながる社会 12
◎犯罪は減っても厳罰化する法律 13
◎事故は減っても厳罰化する法律 17
◎迷惑行為を訴える〝被害者〟たち 20
◎定義が変わる統計 22
◎犯罪からハラスメントへ 28
◎下がり続ける閾値 30
◎不安と感度のいたちごっこ 32
◎自由のパラドクス  34
◎心理的な距離が近づく監視社会 36
◎欲求を抑える「よい子」世代 38
◎道徳心の潔癖化 42
◎ヒポコンドリー社会の到来 44
◎ヒポコンドリーの根っこにある死の恐怖 46
◎ネガティブな催眠を受けやすい社会 48

第2章 心の鎧ができるまで~不安でつながる緊張関係が心の鎧を作る~
◎催眠とは 51
◎変性意識状態にするには不安と安心の二つの方法がある 54
◎不安や恐怖が心の鎧を作る 56
◎心はどこにある? 57
◎心の鎧ができる二つの要因(とらわれとトラウマ) 58
◎トラウマが心の鎧を厚くする 60
◎身近にいる心の鎧をまとう人たち 62
 過剰反応タイプの加藤さん 62
 自意識過剰タイプの本田さん 63
 過剰適応タイプの斉藤さん 64

第3章 心の武装解除~緊張関係から安心できる信頼関係へ~
◎催眠状態から抜け出すための催眠 68
◎催眠と気、自然、武術 70
◎本書における「あるがままワーク」の基本 72
 催眠を使った護心術――4つの基本 74

第4章 護心術「地の巻」~心の鎧に気づき、感じる~
◎心の鎧に気づけない人 77
 護心術――心の鎧感知の術 78
◎自分で心の鎧を作ってしまうマイナス思考の人 79
 護心術――加減剰余の術 80
 護心術――逆説の術 82
◎心の鎧で不安を抑えてしまう人 84
 護心術――心の警報音を聴く術 84
◎心の鎧で心の傷を隠す人 87
 護心術――心の井戸を満たす術 88
◎地の巻まとめ「心の井戸を掘る」 90

第5章 護心術「水の巻」~心の鎧を脱ぐ~
◎いつも緊張していて視線が気になる人 94
 護心術――視線逆反射の術 95
◎人の緊張をもらってしまう人 96
 護心術――呼吸合わせの術 97
◎いつも大人ぶっている頑固な人 100
 護心術――童心に返る術 101
◎いつも強がって頑張りすぎる人 103
 護心術――心の荷物の整理術 104
◎自己開示という心の武装解除 106
◎心の武装解除で成し遂げた江戸の無血開城 109
◎水の巻まとめ「あるがまま伝達で水の合う関係になる」 111

第6章 護心術「火の巻」~真剣で挑む~
◎怒りっぽくて常にイライラしている人 115
 護心術――怒りの鎮火術 116
◎怒れなくていつもウジウジしている人 117
 護心術――怒りの噴火術 118
◎いじめの被害から抜け出せない人 120
 護心術――二重拘束の縄をほどく術 121
 護心術――死の恐怖と向き合う術 123
◎神経質は諸刃の剣 128
◎真剣になれば武器いらず 132
◎火の巻まとめ「怒りと憤り」 135

第7章 護心術「風の巻」~心の鎧をつくらない~
◎ネガティブな情報をもらってしまう人 139
 護心術――隠れ身の術 140
◎ネガティブな情報をキャッチしちゃう人 143
 護心術――トンネルの術 143
◎情報を無にする不問 145
◎身体でわかるということ 148
◎受け流しの術 150
◎うつ状態から立ち直れない人 152
 護心術――心の感冒薬処方の術 153
◎つかんでいないのが極意 155
◎不信感が強くて人の悪口を言う人 157
 護心術――ネガティブな情報網を断つ術 159
◎風の巻まとめ「戦わずして勝つ その1」 161
◎風の巻まとめ「戦わずして勝つ その2」 164

第8章 護心術「空の巻」~あるがままで生きる~
◎志で養う孤独力 170
◎生きる目標がない人 172
 護心術――夢描写の術 173
 護心術――好奇心という羅針盤の術 177
◎燃え尽きてしまう人 178
 護心術――あるがまま受け入れの術 180
 護心術――波乗りノ術 182
◎毎日が面白くない人 186
 護心術――引き寄せの術 188
 護心術――ポジティブになる言霊の術 190
◎ポジティブな面を見つけられない人 192
 護心術――ポジティブな芽を伸ばす術 193
◎空の巻まとめ「心の天気予想図」 198

 あとがき――あるがままの自己実現 202
 〈参考文献〉 205



 はじめに
  
 自分が気になっていることや傷つくような言葉を人から投げかけられたとき、皆さんはどう感じるでしょうか。殴られたわけでもナイフで刺されたわけでもないのに、みぞおちの辺りが痛んだり胸が締め付けられたりするような感覚が得られるのではないでしょうか。ネガティブな情報を受けることで感じる心の痛みは、目には見えないけれども「心の傷」として、イメージや感覚でとらえることができます。
 些細なことなら聞き流すこともできますが、心理的虐待やハラスメントのように、誹謗中傷や罵詈雑言を浴びせられたとき、不快感がいつまでも頭から離れなくなり、しばらく気分が落ち込むほどのダメージを受けることがあります。たとえそれが過去の出来事であったとしても、掘り返して気にし続けることによって、治りかけのかさぶたをはがすように、その傷口をさらに広げてしまうこともあるでしょう。
 死に目に遭うような大きな心の傷の場合は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)として心の奥深くに刻み込まれ、表面上はそのストレスがなかったかのようにふるまうことができても、潜在化した心の傷はシコリとして警戒心や恐怖心だけを残し、フラッシュバックや悪夢として何かをきっかけに後からまた傷口をえぐられることもあります。
 そのような心の傷を治すには〝心のマッサージ〟という易しいものではなく、悪性腫瘍を取り除く〝外科的手術〟のように大きな負担と痛みを伴うこともあります。心の表面ではなく心の奥深い潜在意識まで切り込まないと治らないからです。
 心の傷は個人差があるものの強さや頻度によっては、ストレスとして作用することで、血圧や脈拍、血糖値をも変化させ、頭痛、腹痛、吐き気、動悸、倦怠感などの身体症状として様々なダメージを与えるようになります。学校に行こうとするとお腹が痛くなる不登校児や、会社に行こうとしても憂鬱で動けなくなるサラリーマンのように、心の傷は何らかのダメージとして目に見える形でも表れるようになってきます。
 大したことはないとやせ我慢していても、何度も繰り返しネガティブな情報を受け続けていれば気が重たくなり、ボディーブローのように後からじんわり効いてくることもあります。まるで試合中のある瞬間に突然倒れこむボクサーのように、燃え尽きることで起こるうつ病、さらに悪化した場合には、過労死や自殺といった取り返しのつかない結末を迎えてしまうこともあるでしょう。
 現代社会では戦争や乱闘騒ぎのような目に見える傷を負う肉弾戦よりも、目に見えにくい情報戦が日々繰り広げられています。ネガティブな情報をぶつけることで、ナイフで傷つけ、殺人を犯すのと同じように、人を心の病や死にまで追い込んでしまうことがあるからです。
 ネガティブな情報は繊細で神経質な人ほど敏感にキャッチし、生真面目な人ほど真に受けてしまいます。高性能の集音マイクや高感度のアンテナのように、情報を敏感に拾い上げることができる人ほど深い傷を負いかねません。そして、善良な人ほど人を傷つけたくないがために、ネガティブな感情を自ら抱え込むことで、そのストレスを蓄積させていきます。その蓄積したネガティブな情報を取り除こうと執着することで、泥沼にはまったようにネガティブな呪縛のネットワークから抜け出せなくなり、生きづらさを抱えながら長い人生を過ごしていくことになります。
 情報化社会ではよかれあしかれ様々な情報が飛び交っており、自分のことを褒めて認めてくれるポジティブな情報は、もらえばもらうほど自信と気力があふれてきますが、たとえ直接受けなくても、便所の落書きのようにネット上に書かれた悪口を見て間接的にネガティブな情報を受け取ることでも心はダメージを受けます。
 我々はこのような時代において、ネガティブな情報から心を護るにはどうしたらよいのでしょうか。また、構築されているネガティブなネットワークから抜け出すにはどうしたらよいのでしょうか。私たちにできることは、ネガティブな情報の侵入や攻撃から心を護ることであり、ネガティブな情報を受けても耐えうるだけの強い心を持つこと、あるいはネガティブな情報をポジティブに変換していくことでしょう。
 私はスクールカウンセラーそして、臨床心理士として心のトラブルと向き合う中で、時代の変化に伴い、ストレスとの戦い方も変わってきていると日々感じています。学校はいわば社会の縮図であり、学校という社会を通して、日本社会の現状と未来が見えてくるようです。
 最近の子どもは、直接殴り合いや言い合いのケンカをするようなことは少なくなり、むしろ、インターネットやゲームの二次元の世界で戦うことが増えてきています。ネット上に悪口を書くことで相手を攻撃し、ネットの格闘ゲームの世界で英雄になることで自尊心を高めることができます。また、溢れる情報が錯綜し混沌とすればするほど受けとめる側にはややこしく、知らず知らずのうちにネガティブな束縛を受け、いつの間にか心理的な被害を受けることもあります。情報戦は目に見えにくくわかりにくいがゆえに、それを読み解くための術や新たな知恵が必要になってくるのです。
 そこで、本書ではネガティブな情報から心を護るための術を心理学やカウンセリングの理論、特に、森田療法と精神分析学を中心に取り入れながら、東洋思想の叡智である「武術」「気」「自然」をキーワードにまとめました。心の病を治療する大家と、身体を護ることに秀でた武道の達人、武士の生き方に学ぶことで、心を護るためのヒントがあると思ったからです。
 第1章では、ネガティブな情報にとらわれる現象をヒポコンドリーという概念から現代社会を読み解き、社会的な視点から傷つきやすい心ができる背景について述べました。不安が増えているのではなく不安に感じることが増え、ストレスに敏感になることで、ネガティブな催眠状態に入りやすくなっているということです。実践的な内容をすぐに読みたい方は飛ばして頂いても構いません。第2章では、その不安や恐怖に基づくネガティブな催眠状態になることで、心と身体が緊張して、いわば「心の鎧」ができるまでについて、身近にいる心の鎧をまとっている人を例に挙げながら説明しています。そして、第3章では、「心の武装解除」をしながら、ネガティブな情報から如何にして心を護り、その根底にある不安や恐怖とどう向き合っていけばよいのかについて述べています。心の武装解除をして信頼関係を構築していくことで、自然の力を活かしながら素手でも戦える武術の達人たちの境地に近づきます。
 皆様が、本書を通じて、少しでもネガティブな情報から心を護り、生きづらさを解消することで、前向きに生きるためのお手伝いができたら幸いです。


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