鬼のひみつ ......[童話・絵本]
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蛍大介=作 山ア敦子=絵 A5判変形上製本32ページ 2004年5月9日初版発行 定価1,260円(税込)
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人は、
心の持ち方一つで
おそろしい鬼になる!
勇気とやさしさの物語
ISBN4-434-04353-6 C8793 \1200E
●山ア敦子(やまさき あつこ)プロフィール
静岡県に生まれる。
1979年 東京芸術大学美術部デザイン科卒業。彫金家の吉田積人氏に師事。
1981年 フリーの彫金家として独立。
1988年 膠原病・脳梗塞・狭心症を併発し、彫金を断念。
1989年 絵を描き始める。
1994年 山梨県から宮城県仙台市にある、全国初の重度障害者・難病者のためのホスピス型療護施設「太白ありのまま舎」(社会福祉法人ありのまま舎)に入居。
現在 宮城水彩画会会員、宮城水彩展、宮城平和美術展に連続して出品、毎年、新宿・日本橋でグループ展を開催している
【受賞】
1991年 障害者自立読売絵画展(社会福祉法人ありのまま舎主催)で「ありのまま特別賞」受賞。山梨県心身障害者福祉展で「山障協議会長賞」受賞。
1992年 障害者自立読売絵画展で「読売光と愛の事業団賞」受賞。山梨県福祉村まっりで郵便局のパンフレットの扉絵に採用される。
1994年 仙台市で「二人展」を開催。障害者自立読売絵画展で『花火』(写真)が「審査員特別賞」受賞。
1998年 障害者自立読売絵画展で「優秀賞」受賞。
2001年 宮城水彩展で「仙台市教育委員会賞」受賞。
2002年 宮城水彩展で「成瀬美術記念館賞」受賞。
あとがき(山ア敦子)
人は、心の持ち方ひとつで鬼になることもある。
螢大介さんの物語を読んだとき、だれにもある心の危うさを痛感しました。しかしその一方で、誠実な心はきっと誰かに伝わるもの……というやさしい声も聞こえてきました。そうした螢さんの心のぬくもりを描きたいと、絵筆をとりました。
といっても簡単に描けるわけではありません。一九八八年、膠原病と脳梗塞、狭心症を併発してからだの自由が利かなくなっているからです。障害をかかえた私は一九九四年、重度障害者・難病者のためのホスピス「太白ありのまま舎」(宮城県仙台市)に入居しました。
社会福祉法人ありのまま舎は、筋ジストロフィーをかかえる常務理事の山田富也さんたちが、「自分の生活を自分で決定し、その人生を大切に、楽しく、意義あるものとして送ることのできる場」をつくろうと民間第一号の自立ホームや難病ホスピスを建設されました。
私はこのホスピスで毎日絵を描いています。本来なら私の年齢であれば家事や子育てなどに追われているはずですが、ここでは多くの職員やボランティアさんたちが、私のためにあれこれ手伝ってくださいます。食事の支度や後片付け、掃除はもちろん、画用紙や絵の具の購入、手紙の投函にいたるまで、いつでも気持ちよく力を貸してくださいます。「鬼のひみつ」もまた、こうした応援があって描き上げることができました。
ありのまま舎常務理事の山田富也さんはじめ、出版社へ絵を送る作業などを手伝ってくださった中村達雄さん、職員の皆さん、編集担当の藤田正明さん、そして作者の螢大介さんに心から感謝いたします。
最後に、この本を読んでくださった皆さん、ありがとうございました。蛍さんと私の想いが少しでも伝われば、こんなうれしいことはありません。
●螢大介(ほたるだいすけ)プロフィール
作者は、東北大学医学部を卒業後、郷里の病院に勤務。診療と医学を研究する一方、子どもたちに童話を書き続けている。
また学生時代に、社会福祉法人ありのまま舎の常務理事で、筋ジストロフィー症を抱える山田富也氏と出会い、その後、自作の作品に障害のある人が絵を担当するというスタイルの絵本の出版にも力を注いでいる。
作者のことば(螢大介)
もうずいぶん前のことで、いつだったかは詳しく忘れてしまいましたが、俳優の渡辺謙さんが大変な病魔に冒されながらも、はつらつと仕事をされているのをテレビで見て、世の中にはすごい人がいるものだと、大きな衝撃をうけたのを、今でも覚えています。当時、僕も闘病中でしたが、完全に後ろ向きになっている自分を、なんとも情けないと思ったものです。今ではハリウッド俳優の仲間入りまでした彼を見て、かつて大病を抱えていたとは信じられない人も多いと思います。そして彼自身もそのことを口に出したり、感じさせることなく、そこがまたとても立派で、僕が心から尊敬してしまうところなのです。
そんな彼の雄姿を見て、この物語を書き留めておいたものが「鬼のひみつ」の原形でした。このお話はしばらくは僕の心の中に眠ったままでしたが、以前お世話になった社会福祉法人ありのまま舎の山田富也さんを通し、山ア敦子さんにこのようなすてきな絵を描いていただきました。
山田さんは筋ジストロフィーを抱えながら社会福祉法人の常務理事として様々な活動を続けておられます。山田さんを支援されている方々の自益を顧みない人へのいたわりの姿勢は、どれほど多くの人たちを励まし勇気づけていることでしょう。また、山アさんには、この物語に共感していただき、心が救われた思いでいます。
このごろは世の中が複雑になって心の安まるときが少なくなってきたように思います。この絵本が人への思いやりを考える機会になればうれしく思います。