民法革命......[21世紀の法律論] ロースクールで学ぶ方へ
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  細井睦敬著 四六判上製本332頁 2004年7月22日初版発行 定価2,730円(税込)
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明治維新以降、民法学者や裁判官が100年にわたって行ってきた不毛の議論に終止符を打つ。著者は、シンプルでスマートな民法理論を提示している。民法のほか、民事訴訟法、手形法・小切手法・刑事訴訟法へと理論を展開している。『医法と刑法』に続く、希有な法律論集。


ISBN4-434-04670-5 C3032 \2600E

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 まえがき

 民法学者、裁判官は百年にわたって不毛の議論をしてきた。全くナンセンスな理論を展開してきた。
 私はここに、もっともシンプルでスマートな民法理論を、主としてロースクールの諸君に提示することによって、これから日本の法曹界を担う諸君の頭脳に決定的なインパクトを与えることにした。
 ゴタゴタした民法論争に頭を悩ますべきでない。時間と金の無駄である。そんな暇があったら、スポーツでもしてより健康的な時間をすごすべきである。
 このまえがき自体もシンプルなものにするため、この辺で終わりとする。


●著者プロフィール

細井 睦敬(ほそい・むつたか)
1946年生まれ。北海道大学法学部を卒業後パリ・ロンドンに留学。国立佐賀医科大学を卒業して福岡大学病院皮膚科入局。退職後、ジョージワシントン大学病院で研修。
福岡市でクリニック細井皮膚科を開業。
現在、医事法学会会員。名誉医学博士。
著書に、『二十一世紀への医と法の接点』(日本図書刊行会)、『医法と刑法』(知玄舎)、『運命の戯れ』(メタモル出版)(小説)、『ガンに効いたニューウエイズ活用法』(リヨン社)、『犯罪とベクトル』がある。


●目次

まえがき 1

前編 民法革命

序章 結婚と離婚をめぐって

同性同士の「結婚」について 10
離婚の自由性について 17

第一章 二重譲渡をめぐる問題

民法の本質を理解する道 23
何が根本的な誤りか 24
二重売買契約は成立しえない 24
時効と登記 27
二重譲渡と時効取得の問題 30
不法原因給付と所有権 31
不法原因給付の問題点 32
不法原因給付 34
即時取得の本質的理解 36
民法一九二条「即時取得」 37
即時取得と二重譲渡 39
民法一九三条の理解 40
二重譲渡と占有改定 41
公売に基づく物権変動を対抗するのに登記が必要か 43
九六条二項と詐欺取消 44
再び所有権の変動・移転の考え方 48
無権限で建てられた建物の実際の所有者と、登記名義人が異なる場合に、土地返還請求権はどちらに対して行使すべきか 53
背信的悪意者排除論は不要である 55
背信的悪意者と二重譲渡 56
留置権 58
造作と留置権 58
留置権の牽連性 59
二重譲渡と留置権 60
所有権留保の問題 62
なぜ二重譲渡は不可能か 64
公用徴収に基づく物権変動を対抗するのに登記が必要か 65
不動産の譲受人と賃借人の関係 67
指図による占有移転 68
回復請求者 69
無権限で建てられた建物の実際の所有者と登記名義人が異なる場合 70
不当利得と物権的請求権 72
譲渡担保における弁済後の譲渡 74
目的物譲渡と受戻権 75
譲渡担保権者が目的物だけを自分のものとして譲渡した場合の法律関係 76
譲渡担保の二重設定 77

第二章 危険負担をめぐる問題

受領遅滞と危険負担の問題 79
危険負担の適用場面 80
危険負担の問題について 82
地震による建物滅失と危険負担 86
二重譲渡と危険負担 87
請負契約における、仕事完成後、引渡し前の両当事者の責に帰すべからざる事由による消滅の場合 88
目的物の滅失・朽廃等による使用不能 89

第三章 所有権侵害をめぐる問題

所有権移転時期について 91
二重譲渡と所有権移転時期 94
具体的なものを基準に所有権移転時期を定義する 96
再び物権の二重譲渡の問題について 98
七〇九条の損害賠償請求 102
費用負担の問題 103

第四章 債権をめぐる問題

債権の二重譲渡について 105
第二譲受人への譲渡を詐害行為として取り消すことができるか 107
四六八条と九四条二項 108
九六条三項と四六八条一項 111
五四五条一項但書と四六八条一項 112
請負契約と債権譲渡と解除 114
債権の二重譲渡と無留保承諾 115
無留保承諾と債務者所有の不動産を目的とする抵当権 116
公序良俗違反と異議なき承諾 118
債権の二重譲渡と確定日付ある通知 119
債権が弁済されたにもかかわらず無留保承諾をした場合 121
騙取した金で第三者に弁済した場合 122
加害者不明の共同不法行為 123
共同不法行為が成立するための要件 123
不法原因給付の返還特約は七〇八条に違反し無効となるのか 124
代償請求権は不要である 126
詐害行為取消権 127
再び詐害行為取消権の根本問題 128
五四五条の解除の本質的理解 131
完成した製作物の所有権は誰に帰属するのか 134
借家人死亡と相続権のない同居人 136
不動産の賃貸人と妨害排除請求権 137
賃借権の二重改定と二重譲渡 138
賃貸借消滅と借家人の立退き 139
賃貸人の債務不履行と建物買取請求権 140
旧賃貸人と新賃貸人 140
敷金返還請求権 141
借地権の譲渡と敷金関係の承継 142
賃借人の修補義務 143
費用償還請求権 144
騙取された被害者の不当利得返還請求権 144
いわゆる詐害的短期賃貸借の問題 145
期間の定めなき賃借権は三九五条で保護されるか 149
承諾転貸の場合における転借人の過失について賃借人は責任を負うか 149
不法占拠者との関係 150
動産賃貸借の対抗力 151
建物明渡しとの同時履行 152
不当利得返還請求権と不法行為との関係 153
不法の比較 155
財産隠匿行為 156
高価な壷を安物と思い安価で売却した場合 158
原状回復と果実 159
金銭返還をめぐる問題 159
金銭の現存利益 160
別原因により死亡した場合 161
仮定的因果関係 165
複数の原因が重なった場合 166
過失相殺 167
病的素因、加齢的素因 168
近親者の慰謝料請求権 169
賠償請求権の相続の問題点 169
特殊不法行為 171
七一七条と失火責任法 174
開発危険の抗弁と血液製剤 176
共同不法行為 177
同時犯の責任問題 180
被害者の素因 182
好意関係について 182
差止請求の法的構成 183
事実行為と使用者責任 184
代償請求権なる概念は不必要である 186
不動産賃借権に基づく妨害排除請求権 187
賃借建物の売却と登記の問題 188
賃借権と登記 189

第五章 不特定物の賠償責任をめぐる問題

不特定物の特定化(特定物と瑕疵担保責任の問題) 191
種類債権の特定と危険負担 195

第六章 抵当権をめぐる問題

抵当権の本質的特徴について 199
三七一条の解釈 200
三七〇条の附加一体物に従物が含まれるか 201
山林の伐採された伐木について 202

第七章 民法総則をめぐる問題

制限能力者の取消と第三者の保護 203
制限能力者が取り消した場合の処理 205
代理人が代理権を濫用した場合 207
代理人の通謀虚偽表示 207
本人が無権代理人を相続した場合の追認拒絶 208
代理人が通謀虚偽表示をした場合、相手方が責任を負うか 210
虚偽表示の本質的理解 210
九四条二項と登記 212
九四条二項の「第三者」 214
九四条二項の「善意」の意味 214
九六条の詐欺による取消と二重譲渡、債権譲渡の問題 215
解除と四六八条一項「承諾」 218
錯誤 219
一六二条は「他人の物」(他人の不動産)と規定しているが、自己の物を時効取得することが認められるか 224
代理権の授与 226
虚偽表示は撤回できるか 228
虚偽表示と移転登記の抹消 228
無権代理行為の追認 229
無権代理人が本人を相続した場合 230
無権代理行為と追認・相続 232
本人が無権代理人を相続した場合 232
他人物売買と相続 233
無権代理人と本人の双方を相続した場合 233
権利外観代理か錯誤か 234
七六一条の日常家事とは何か 235

後編 21世紀の法律革命

第一章 民事訴訟法

債務不存在確認の訴えと一部認容 238
一部請求の問題 243
一部請求と過失相殺 244
請求棄却 245
法人の代表者の地位をめぐる紛争においては、だれを当事者とすべきか 246
境界確定の訴えの法的性質をどうとらえるべきか 247
相殺の抗弁と給付の訴えは二重起訴禁止の趣旨に触れるか 248
判決理由中の判断にも争点効という拘束力を認めるべきか 251
承継人の固有の抗弁と承継人の範囲 253
共同訴訟人間に主張共通の導入は許されるか 254

第二章 手形小切手法

手形法・小切手法 256
原因関係が取り消されたら手形関係はどうなるか 258
裏書に錯誤があった場合 258
振出の錯誤 259
手形行為独立の原則の理論的根拠 259
裏書が無効な場合 259
振出が無効の場合 260
手形行為と権限濫用 261
表見代理についても手形法にも適用されるか 262
善意者の介在と戻裏書 262
後者の抗弁の事例 263
無権利の抗弁 264
補充権 264
善意取得・無権利限定説と非限定説 266

第三章 刑事訴訟法

「強制の処分」(一九七条一項但書)とは何か 268
職務質問に応じる法的義務 269
強制手段にあたらない有形的行使は許容されるか 270
所持品検査の問題 271
自動車検問の適法性 271
被疑者の逮捕と取調べ 272
勾留理由と取調べの必要性 272
任意取調べの限界 273
余罪を取り調べることはできるのか 273
接見指定の問題 274
取調べに応じる義務と黙秘権 275
公訴事実の同一性の判断はいかなる判断か 276
不適法訴因への変更は可能か 279
訴因変更命令に形成力はあるか 281
情状(量刑上の資料となる事実)の解明方法 283
純然たる訴訟法上の事実の証明方法 284
手錠をかけたままの取調べによる自白 285
不任意自白に基づいて発見された証拠物 286
いかなる範囲で補強証拠が必要か 287
取引の事実を記載した商業帳簿を補強証拠とすることができるか 288
共同被告人の供述を証拠にできるか 290
共犯者の自白に補強証拠が必要か 291
一事不再理効の本質 293
牽連犯の関係 294
審判の可能性が事実上ない場合の再起訴の可否 295
黙秘権の本質 296
検察官の役割と公訴権濫用 301
当初訴因の基準性 303
不適性訴因への変更 304
訴因変更に関するいわゆる具体的防御説と抽象的防御説 305
訴追裁量を逸脱し、起訴猶予処分が相当な事件を起訴した場合、公訴権の濫用にあたるか 308
違法捜査に基づく起訴が公訴権の濫用にあたるか 310
一罪の一部起訴は許されるか 311
被告人が余罪被疑事件について逮捕、拘留されている場合、余罪捜査のため接見捜査できるか 313
刑事政策 315
少年法の根本問題 322
再び死刑制度について 325

あとがき 327
主要参考文献 330

 あとがき

『図解でわかる心理学のすべて』(深堀元文編著・日本実業出版社)に次のような文章がある。
「創造性と研究テーマとして初めて取り上げたのはアメリカの心理学者、ギルフォードです。彼は人間の知能構造にはすでに知っていることを手がかりに推論によって一定の議論に到達する思考過程である「集中的思考」と、わずかなことがらを手がかりにして自由な連想によってさまざまな解答を生み出す「拡散的思考」があると考えました。
 そしてこの拡散的思考こそが創造的活動の基礎となるものであるといっています。
 創造性を発揮するための特性として、
 @流暢性(頭の回転の速さ)
 A柔軟性(自由に考えられる能力)
 B独創性(他人と違うユニークなものを生み出す能力)
 C感受性(問題点などを敏感に見いだす能力)
 D綿密さ(細かく思考できる)
をあげている。
 しかし、現在使われているほとんどの知能テストは、あらかじめ解答が決まっているため、集中的思考を測定することはできても、独創性を図ることはできません。
 また一九九〇年代に入ってアメリカの心理学者サロヴェイらは感情的知能としてEQという新しい概念を提唱しています。
 学問ができるかどうかというより、共感性、自己認知力、自己統制力、粘り強さ、知性柔軟性といった、社会適応性を測定しようというものです」
 私が長々と引用したのは、今の東大・京大をはじめとするいわゆる秀才は逆に集中的思考のみをチェックして、それに合致していたから合格したのだという事実を忘れてはならない。拡散的思考のチェックはなく、EQのチェックは全くない。
 新しい法的問題に対してはまさに拡散的思考能力が問われるのである。
 また、人間関係においては、EQが問われるのである。
 にもかかわらず、東大・京大等の秀才諸君は、かかる面があることはチェックされていない。
 私は現在の日本の受験制度では二十一世紀に必要な能力をもっている学生を選び出せないと考えている。
 それはまた、司法試験制度も同じことである。集中的思考能力以上に拡散的能力の開発と、その能力をもった学生を合格させるシステムこそがロースクール合否にとって大切なことである。
 私はこの本によって、自分でそのことを実践したつもりである。諸君の柔軟で創造的能力をもって、私の理論を論破してくれたまえ。大いに期待している。私についてこれる学生を、また私を論破しうる学生を私は真の秀才と定義したい。


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