いのちの現場24時 民間救急救命士の使命と実態 
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  鈴木哲司著 四六判240頁 2004年4月21日初版発行  定価1,890円(税込)
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 救急救命士は、緊急時の人命を救うために、24時間体制で待機し、活動している尊い人達。救急救命士は消防機関以外の場所でも活躍しています。それを著者は「民間救急救命士」と呼んでいます。本書は、そんな世間の蔭で活躍する若き救急救命士たちの使命と活躍の実態を浮き彫りにしたドキュメントです。

 フジテレビ解説委員・黒岩祐治氏推薦文から

「私は彼らに言いたい。民間救急救命士の歴史を作っていく…その挑戦こそが日本の救急医療の裾野を広げ、本当に私たちが安心できる充実した救急医療システム構築につながっていくに違いないと…」 (本書オビ)


ISBN4-434-04315-3 C0030 \1800E

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●著者プロフィール

鈴木 哲司 (すずき てつじ)

 昭和48年生まれ、新潟県出身。
[学歴]
 國學院大學文学部神道学科卒業。
 新潟医療技術専門学校救急救命士科卒業。
 聖徳大学大学院児童学研究科児童学専攻修士課程修了(児童学修士)。
 現在、千葉商科大学大学院政策研究科政策専攻博士課程、在学中。
[職歴]
 平成八年神職として神社に奉職後、特定医療法人徳洲会東京本部入職。
 湘南鎌倉総合病院救急救命士を経て、
 国際医療福祉専門学校救急救命学科専任教員。
 現在、帝京大学医学部付属病院救命救急センターで活躍中。 

 著者ホームページ  http://t-suzuki.info/


 まえがき

 救急救命士というと、消防機関に勤め救急車で活躍している姿を最初に思い浮かべる人が多い。これまでは、消防機関の救急救命士のみに焦点が当てられがちだった。が、救急救命士は消防機関以外の場所でも活躍している。彼らは少数ながらも、人命を救うために日夜頑張っている元気のある若者たちである。そんな民間の中の救急救命士を、私はあえて「民間救急救命士」と呼んでいる。私が本書を著したのは、そんな世間の蔭で活躍する若き救急救命士たちに日の目を当てたかったからだ。「自分だけ良ければ他人はどうでもいい」という現代社会の風潮の中で、「世のため人のために一人でも多くの人命を助けたい」という熱い志を、彼ら若き救急救命士たちは使命としている。そんな民間救急救命士たちの活躍の実態を、私は一人でも多くの人に伝えたい。民間救急救命士への理解がより一層深まることを期待している。
 人の喜びを我が事のように思える、「プライド」をもった若き救急救命士達の「元気」が、国民の救急救命士の認知度を上げ、また、かけがえのない命について、今一度考える機会になり、さらに救急救命士の活躍場所や職域拡大の一助になることを、私は願う。
 本書がそのために少しでもお役に立つことがあれば、望外の幸せである。 


●目 次

   まえがき 1

   推薦の言葉 帝京大学医学部教授・救命救急センター長 小林国男 2

   推薦の言葉 フジテレビ解説委員・キャスター 黒岩祐治 6

 第1章 「救急救命士」ってなに?−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   救急隊員だけではない救急医療を支える現場 22
    ・不夜城・東京の街を走る救急車 22
    ・民間で働く救急救命士たち 22

   歴史のなかの救急活動の端緒 24
    ・軍隊内部でのラクダによる搬送が救急の始まりだった 24
    ・日本では八六九年に「救急」という言葉が存在した 25

   救急救命士誕生の社会的背景と役割 27
    ・「救急救命士法」の誕生とパラメディック 27
    ・どうしたら「救急救命士」になれるか 29
    ・救急医療機関とプレホスピタルケアの大切さ 31
    ・大きな「民間救急救命士」の存在意義 33

 第2章 「民間救急救命士」活動ドキュメント−−−−−−−−−−−−−−−−−

  ドキュメント【1】介護施設で働く救急救命士―小林真吾 36
    ・前職は自動車の営業マンだった 36
    ・施設前で交通事故―救急救命士・看護師が総動員で対処 38
    ・「看護助手」ではない、「救急救命士」だ 42
    ・「救急現場に居合わせた人」がバイスタンダーだ 44
    ・「危ない! 施設内で転倒だ」―六〇代女性の場合 45
    ・高齢者の診断の難しさを痛感―九〇代女性が嘔吐 46
    ・高齢化社会へ向かっての救急医療のあり方 48
    ・訪問看護師と救急救命士がペアになって介護にあたる時代 48

  ドキュメント【2】民間救急会社で働く救急救命士―清水邦晃 49
    ・友人の事故がきっかけで救急救命士になる決意を 49
    ・部屋には缶詰が一〇〇個散乱―精神患者搬送の難しさ 51
    ・精神病患者の搬送サービスは民間救急の需要が多い 53
    ・自宅へ帰って早く孫の顔が見たい! 54
    ・「希望」という名の薬 56
    ・故郷に帰って最期を迎えたい 57
    ・偽救急車でサイレン鳴らし逮捕された―あの事件 59
    ・多くの患者を安全に目的地まで搬送していきたい 60
    ・民間救急会社をもっと理解してもらいたい 61
    ・民間救急車にしかできないサービス 62
    ・救急医療における本当のサービスとはなにか 64

  ドキュメント【3】ライフセーバーのボランティア―著者本人 66
    ・きっかけは水難救助のボランティアからだった 66
    ・本間さんと筆者との運命的な出会い 67
    ・遺体がお礼にやってくる話 69
    ・「命」の教育の大切さ 72
    ・私の総合病院での勤務時代 75
    ・アメリカでの研修で悟ったパラメディックの存在感 75
    ・この道五〇年の経験と実績をもつライフセーバー 76
    ・親子四人の楽しいはずの海水浴―お父さん、目を覚まして! 79
    ・大学のサークル仲間同士の危険な事故 81
    ・「溺れたら泳ぐな、浮いて待て」が鉄則だ 84

  ドキュメント【4】小児科クリニックで働く救急救命士―十文字有希 85
    ・厳しい小児救急医療の現状 85
   ・「救急救命士だから」「看護師だから」の枠はない 86
    ・子供の症状が急変した―呼吸停止だ! 87
    ・虐待……? 頭の中で出血していた生後半年の赤ちゃん 89
    ・仕事をもつお母さんたちに支援の手を 90
    ・「バイバイ!」と笑顔で帰っていく瞬間に幸せを感じる 91
    ・パンが喉に詰まった!―だが二〇分間も気がつかず 93
    ・精神病の患者は実に感受性が豊かだ 95
    ・「私は救急救命士」とアピールすることが大切だ 97
    ・民間で働く救急救命士にも情報を流してほしい 98
    ・パラメディックの資格を取りたい 100
    ・小児救急医療はさまざまな問題を抱えている 101
    ・核家族化がもたらした養育環境の変化 103

 第3章 総合病院で活躍する民間救急救命士−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    救急救命士の救急活動体験談 106
    ・将来は人とは違ったことがやりたい―高橋圭介の場合 106
    ・きっかけは野球の練習中でのケガだった―松田峰由紀の場合 107
    ・自分がやりたい職業に出会えた喜び―平井元の場合 108
    ・人々のためになる仕事がしたい―香川智の場合 110
    ・アメリカのパラメディックを日本でも実現したい―角川雅一の場合 111
    ・救急救命士は将来性のある仕事―中里理絵の場合 112

  二四時間体制の救命活動の実態 113
    ・彼らが働く「湘南東部総合病院」とは 113
    ・救急車が「ドクターカー」に早替わり 115
    ・消防機関の救急車に同乗し患者の救急看護にあたる 116
    ・もっと「ドクターカー」の普及を 119
    ・ドクターカー方式とパラメディック方式 121
    ・地域密着型の医療サービスを推進させよう 121

  救急救命士の使命の現場 123
    ・偶然にも遭遇したタクシーと乗用車の追突事故 123
    ・救急救命士は患者から大いに感謝される職業だ 126
    ・なんと足首が皮一枚でつながっているだけだった 127
    ・救急救命士になれて本当によかった…… 131

  医者でも看護師でもない救命士の存在意義 133
    ・病院業務の一つとして救命講習会を開催する 133
    ・救急救命士という職業にプライドをもとう 135
    ・病院における救急救命士の役割は非常に大きい 136
    ・アメリカのよきサマリア人法 138
    ・救急救命士はこれからが正念場だ 140
    ・病院内で救急救命士はなにができるのか 141


 第4章 アメリカのパラメディック−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  パラメディックについて 144
    ・日本の救急救命士の土台となるパラメディック 144
    ・アメリカにおける救急隊員の資格とは 146
    ・日米でこんなに大きい実習時間の差 147
    ・光るスーパーバイザーの存在 148
    ・サンフランシスコのパラメディックたち 149

  学生たちの海外研修体験談 150
    ・パラメディックの前向きな指導に感動した―小林拓矢の体験 150
    ・初めて診る重度のDM(糖尿病患者)―大柳泰江の体験 152
    ・自損行為の傷病者との心のふれあい―同じく大柳泰江の体験 153
    ・最初から壮絶な血の現場に赴いた―石井久美の体験 155
    ・傷病者から「がんばれよ」の激励―同じく石井久美の体験 157

  私が見たアメリカの民間救急救命士の事情 159
    ・アメリカの救急番号は「九一一」 159
    ・民間救急会社AMR(American Medical Response) の改革 160
    ・公的消防救急と民間救急会社との共存 161
    ・こんなに違うアメリカと日本の救急医療 162
    ・人を救う職業はいかに大変なことか 163
    ・訴訟大国アメリカの現状 165
    ・日本での民間救急ビジネスの難しさ 166

 第5章 民間救急救命士に将来はあるか−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  医療人としての自覚 168
    ・指導者としての救急救命士の不在 168
    ・女性救急救命士が活躍することの意義 169

ドクターカー・ドクターヘリへの期待 170
    ・ドクターカーの効率的かつ効果的な運用を 170
    ・ドクターヘリの運用には住民理解への努力が大切 172
    ・医師搭乗で救命率向上―消防ヘリとドクターカーの連携 174

  救急医療体制のあり方 176
    ・救急医療体制の行政面における一元化を 176
    ・地域特性に基づいた救急医療体制の構築 177
    ・地方が自分で考える時代が到来した 178
    ・三省にまたがる複雑に絡み合った救急医療システム 179
    ・救急救命士教育の改善を模索すべきだ 180
    ・実習に重点をおくカリキュラムへ 181
    ・医師と救急救命士の協調体制を築こう 182
    ・プレホスピタルケアの質的向上を図ろう 183
    ・実習強化なくして業務拡大の道はない 183
    ・メディカルコントロール体制構築への考察 184
    ・救急車の有料化を強く提案する 186
    ・充実させたい救急医療データベース 187
    ・救急救命士の質的向上をめざせ 188

  心肺蘇生法の普及のために 190
    ・命を救うことは一般人にもできる 190
    ・救急医療に関する三つのポイントとは 191
    ・だれもが「自動体外式除細動器」を使える社会に 192
    ・AEDを普及させよう 194
    ・除細動器の一般使用解禁への胎動 195
    ・除細動器使用で心拍再開が増加する 197

  救急救命士の活動の可能性 197
    ・一般的となったリスクマネジメントの考え方 197
    ・人の集まる場所こそ民間救急救命士が必要だ 199
    ・民間救急救命士は今こそ団結しよう 201
    ・救急救命士とは実に可能性のある仕事だ 203


 第6章 未来を支える若者たち−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  若者が考えている命というテーマ 208
    ・君たちが「救急救命士」をめざしたきっかけは? 208
    ・病院というしがらみに左右されない救急救命士 210

  バイスタンダー事例の報告 212
    ・あらためて驚かされたバイスタンダー事例の多さ 212
    ・事例1―プールに沈む五〇歳くらいの男性―東福寺孝義 213
    ・事例2―JR新宿駅で男子高校生が突然倒れて意識を失う―荒井亜紀 213
    ・事例3―自宅で母親の容態が急変し帰らぬ人に―古別府盛人 216
    ・救えなかった命への無念さから救急救命士を志願する 218

  志ある学生たちの声―教員との対談 220
    ・駅で倒れた人がいたのに何もできなった自分 220
    ・生まれて初めて死亡者に直面―命の重さを知った 222
    ・命はひとつ―自分の命あってこそ人を救える 223
    ・救急救命士を志す人たちの年齢の差に違和感はない 225
    ・医療現場で生かせる救急救命士法の改正をねがう 226
    ・蘇生できたっていう現場に立ち会えたらうれしいな 227
    ・もっと家族の絆を深めてほしい 228

  あとがき 231

       【参考資料】

        民間救急救命士教育施設一覧 234
        日本赤十字社への連絡先一覧 235
        赤十字救急法「心肺蘇生法の手順」 236
        参考文献 238


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