●[異界見聞録6]
平田篤胤著「勝五郎再生記聞」現代語超編訳版
――前世の記憶を持つ子どもの話 (2016年9月新刊)
西田 みどり
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■POD書籍 : \1,200 (消費税別)/(B6判106頁 ISBN978-4-907875-39-8)
2016年9月30日初版発行
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■電子書籍: \600 (消費税別)
2016年10月7日初版発行
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◎本書について
江戸時代の国学者、平田篤胤が前世の記憶を持つ子どもについて研究し記録した「勝五郎再生記聞」の現代語超編訳西田版。
◎著者紹介
西田みどり(にしだみどり)……専門は比較文化、近代日本比較文化史。文学博士。2006年、「『まこと』と『救世主』――久米邦武の比較文化論」で中外日報社・涙骨賞受賞。著書に『異次元体験アストラルトリップ』(学習研究社)、『サイババ超体験』(徳間書店)、『偉人・天才たちの食卓』(同)、『抱きしめる聖者アマチの奇蹟』(同)、同書改題版『アマチの教え』(知玄舎)、『〈型〉で書く文章論』(同)、『接続語を使えば、誰でも書ける』(同)、『文章表現のためのワークブック』(同)、『脳トレ文章講座』(同)、『「まこと」と「救世主」――久米邦武の比較文化論』(知玄舎電子書籍)、『[異界見聞録1]なぜ「ベジタリアン?」世界史人の謎――マイケル、レノン、ダ・ヴィンチ、トルストイ、ガンジー・・・!』(同)、『[異界見聞録2]こんなに「粗食だった?」日本史人の謎――空海、賢治、ナオ・王仁三郎、南北、家康、謙信、信玄、海舟・・・!』(同)、『[異界見聞録3]バリの呪術師――イワヤン・シュリアナに会う』(同)等がある。芝浦工業大学、大正大学、学習院大学非常勤講師。佐伯マオのぺンネームで雑誌等で執筆活動。
●目次
編訳者まえがき(西田みどり)
◎時空を超えて共通性を持つ前世体験
◎イアン・スティーヴンソンは「勝五郎再生記聞」を読んで前世研究を始めた
◎日本には前世はあって当たり前という「空気」があった
◎「ニンニクをむきたい」――子どもが突然言った
◎私という存在は死後も続くのか
◎平田篤胤のスタンスは前世の持つ意味にフォーカス
一、平田篤胤によるまえがき
二、勝五郎が話し始めた(立入事負による記述)
◎「にいちゃんはこの家に生まれる前はどこの誰の子どもだったの?」
◎前世で死んだとき――白い髪のおじいさん
◎程窪村から生まれ変わった勝五郎を訪れた老人
◎前世の家に帰る
三、篤胤、勝五郎に会う(篤胤の勝五郎への聞き取り)
◎勝五郎が篤胤宅へ遊びに来た
◎勝五郎の話した前世情報
・僧侶嫌い
・「白い髪の老人」とは、なにもの?
◎勝五郎はなぜ仏事・僧侶が嫌いなのか――父・源蔵の話
◎勝五郎は幽霊も化け物も怖がらない
◎父・源蔵の話した信仰についての考え
◎「白い髪の老人」に対する篤胤の見解
◎産土の神のはたらきについての体験談――源蔵の話
◎氷川大明神
◎和漢古今の書に散見される再生譚
◎十七歳で死んだ息子が、同じ家に生まれ変わる
◎死んだ体から抜け出した牛飼い
◎篤胤による解説
◎氏神に礼を尽くさなかったため火事に遭う(『古今著門集』)
◎稲荷の氏子が加茂神社での昇進を望んだが阻まれる
◎各人を担当している守り神がいる
◎「後の世も此の世も神にまかするや、おろかなる身の頼りなるらむ」(『新拾遺集』)
◎公顕僧正の祈り(『沙石集』)
◎仏教が外国の宗教であることを知らない
【史料編】役人による文政六年(一八二三)の記録――多門伝八郎の報告書写し
◎文政六年四月十九日御書院番頭、佐藤美濃守殿への届書の写し
◎中根宇右衛門殿知行所(編集)
◎多門伝八郎殿知行所(編集)
【参考資料一】 平田篤胤著『再生記聞』写本
【参考資料二】宮崎成身編纂『 視聽草』写本
編訳者まえがき(西田みどり)
◎時空を超えて共通性を持つ前世体験
同じような〈型〉を持った体験談が、時空を超えて存在するとき、その体験は普遍的なものである可能性がある。その一つが、子どもの前世体験だ。二歳から八歳くらいの子どもが、前世に住んでいたところや前世の両親について話し、恋しがって泣く、どうしても前世の家に帰りたいという、それで精神的に不安定になる……という体験である。中には住んでいた地名まで記憶しており、せがまれて連れて行くと、前世の家までスタスタと歩いていき、「ここが僕の家だから、あなたは帰っていいよ」と現世の母親に向かって言うこともある。
これと同じ〈型〉の体験を、現在のスリランカやインド、ドイツやフランス、アメリカの子どもたちが体験し、また日本ではNHK放送で実例が紹介され(NHKスペシャル「科学者たちの挑戦」二〇一二年三月二十二日放送)、さらに大学の研究所で研究されて(アメリカのヴァージニア大学が先駆者)世界のほとんどの国で同様の事例が集められているとしたら、その普遍性は強まる。ヴァージニア大学のジム・B・タッカー教授はすでに二五〇〇の事例を収集したと述べている。
前世というテーマを、科学的側面から、実証的に研究したヴァージニア大学医学部主任教授、イアン・スティーヴンソン(一九一八~二〇〇七)は、インドやスリランカ、ミャンマー、ナイジェリア、タイなどに赴き、自らが面接して生まれ変わりの事例を収集している。その成果は『前世を記憶する20人の子供』(今村光一訳、叢文社、一九八〇)、『前世を記憶する子どもたち』(笠原敏雄訳、日本教文社、一九九〇)、『前世を記憶する子どもたち2――ヨーロッパの事例から』(笠原訳、日本教文社、二〇〇五)に収められている。前二冊の調査はアジア地域が中心であるが、『前世を記憶する子どもたち2』ではヨーロッパの事例が収集されている。そのあとを引き継いだタッカーは、主にアメリカに注目して事例収集を進めている。前述したように、ヴァージニア大学では現在二五〇〇の信頼できる事例を収集しており、南極以外のすべての国に生まれ変わりの事例があったということだ。保存するに値する事例は、六項目の条件のうちの二つを満たしていることを基準としている。それは以下のようなものだ。
① 再生の予言。
② 予告夢。
③ 前世に関係する母斑や先天的欠損。
④ 幼時の中心人物による前世に関する発言。
⑤ 前世の人格がなじんでいた人物や物品の、中心人物による再認。
⑥ 中心人物の変わった行動。
客観的に評価できる事例の収集に努めているのである。
……(以下略)
一、平田篤胤によるまえがき (西田、現代語訳)
この再生記聞の本は、文政六年(一八二三)六月末に清書を終え、まだ表紙も付けていないものを、七月二十二日に江戸を発って京都に行ったとき、携えていった。
八月六日に京都に着き、宿を取ってしばらく滞在した。
その間、富小路治部江殿に招かれて、しばしば屋敷までお訪ねした。ある日、本書についてお尋ねがあり、ぜひ見せてほしいと仰せになるので、十三日の夜に持参した。すると、その場で読み終えてしまい、「これはたいへんおもしろいものだから、仙洞御所の上皇(西田注:光格上皇)にもお見せしたいが、いかがかな。そなたの名前を知ってもらえるきっかけにもなる」とおっしゃったので、「いかようにでも」と申し上げた。
翌日、またお訪ねすると、(上皇に)ご覧にいれたところ、たいへん御心にかない、繰り返しお読みになり、大宮御所(皇太后の御所、女院御所)にもお見せした。雲の上の人(高貴な人)の周辺でもときどきこのような珍しいことがある、江戸から来た篤胤というものが記しているのと同じようなことが、高貴な身分の方々の間でも起こったことを確かに聞いたことがあるということで、女房(女官)たちにこの本を写させるため、五十日ほどお手元に留めおかれた。本が富小路治部江殿のもとに戻ってきたのは十月四日であった。
本書のここかしこに折り目が付いているのは、御所で上皇がお読みになったとき付けたものだとお聞きした。たいへん畏れおおいことだと思い、朱色でその箇所にしるしを付けておいた。そうして江戸に持ち帰りこの表紙を付けた。偶然にもこの本を読む機会に恵まれた人は、心して、決して粗末に扱わないよう十分注意をするように。
あなかしこ
篤胤 花押
未十二月十三日