医法と刑法 ......[もうひとつの視点] 医療問題から少年犯罪…様々な刑罰への提言
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  細井睦敬著 四六判上製本368頁 2000年11月15日初版発行 定価2,730円(税込)
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現代社会に起こるさまざまなかつ複雑な問題−とくに医療問題と少年犯罪を中心に、その合理的な解決法を「ベクトル」の手法を用いて試みる、希有な法律論集。


ISBN4-7952-8675-2 C3032 \2600E

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 まえがき

 今日、今までにない新たな、かつ複雑な問題が発生している。特に、医療と法律にからむ問題が多発している。かかる問題を解決するにあたって、私は、数学的アプローチによって解決したいと考え、主としてベクトル論と座標を用いることによって問題を整理し、一義的に答えがでるようにした。そして、犯罪類型を四つに分けた。故意犯、過失犯、致犯、無謀犯である。致死を作らないと現行刑法を正しく理解することはできない。例えば、強姦罪は刑法第一七七条で二年以上の有期懲役である。強姦致死罪は、刑法第一八一条で、無期または三年以上の懲役である。さて、すべての学者は、強姦致死罪は強姦罪と過失致死罪の結合犯と考えている。ところで、過失致死は、刑法第二一〇条で五十万円以下の罰金である。とすると、強姦罪と過失致死罪が併合しても、無期または三年以上の有期懲役には絶対にならないのである。したがって、今の刑法学者は、かかる点を十分に説明できていない。
 以上の点を十分に説明するためには別の新たな犯罪類型「致犯」があることを認めざるをえないのである。かかる新たなる刑法理論をもって、刑法本来の問題と医療と法律がからまる問題に対し、私の独自の理論展開をした。これを出発点として、多くの読者が自分で考え、理解を深めていくことを大いに期待したい。


●著者プロフィール

細井 睦敬(ほそい・むつたか)

1946年生まれ。北海道大学法学部を卒業後パリ・ロンドンに留学。国立佐賀医科大学を卒業して福岡大学病院皮膚科入局。退職後、ジョージワシントン大学病院で研修。
1988年5月、福岡市でクリニック細井皮膚科を開業。現在、医事法学会会員。
著書に、『二十一世紀への医と法の接点』(日本図書刊行会)、『犯罪とベクトル』がある。


●目次

●前編 医と法

第一章 そのとき医師はどうするべきか 生命と法の接点

積極的安楽死について……12
推定余命を患者にいうべきか……16
家族とプライバシーと自己決定……20
良きサマリア人立法……24
重症障害新生児の選択的非治療……27
堕胎と出生前診断……29
減胎手術……31
臓器移植法成立後の問題点……35
遷延性植物状態 …… 41
ある看護婦の意見から学ぶこと……44
能力者に対する代行決定について……47
成年無能力者の場合……49
東洋思想とパーフェクトベビー……51 
重篤な遺伝病と中絶……53
発病前の遺伝子診断……54
代理母……57
代理母の産んだ子が障害をもった子であった場合……65
幼児放棄と医学的根拠……67
人らしく生き、死を迎えるために……69
自殺は自己決定権の権利行使といえるのか……71

第二章 医療で罪が問われるとき 医療の犯罪

司法取引とマイナスマイナス理論……74
医師が看護婦に毒入り注射器で人を殺害させようとした場合……76
致死量の二分の一ずつを二人が同時に投与した場合……78
誤って患者に青酸カリを投与し死亡させた場合……79
自殺教唆……79
自殺未遂の人を医師が救助しなかった場合……80
妊婦が生命維持装置を医師にはずしてくれと頼んだ場合……81
堕胎罪について……84
十六歳の女性の人工妊娠中絶……87 
医事法学一五(二〇〇〇年)……88
カルテ開示の根本問題……90
人間ドック事件……93
陥没乳頭手術事件……95
アスピリンショックと問診義務……96
フェニトイン等による中毒性表皮壊死(TEN)と説明義務……98
頸部硬膜外ブロック後ショック死事件……99
狂犬病予防接種事件……99
断食道場事件……100
柔道整復師事件……101

第三章 医師はこれからどうすべきか 医療過誤の判例とIT革命

意識すべきIT革命……103
IT革命とヤブ医者……103
最新医療と転医義務……106
緊急避難の法理と自己決定権……108
人工股関節置換事件……113
先天性風疹症候群児出生事件……114
死因事後説明過誤事件……115
家族に対する説明の義務……116
三宅島緑内障誤診事件……118
療法の選択及び帝王切開に関する過失……118
出産後の失血死事件……120
一時外泊中の脳出血死事件……121
未熟児網膜症事件……122
乳がん確定診断遅延事件……124
陣痛促進剤の投与……126
アメリカにおけるたばこ被害に関する「フロリダ代表訴訟」……128
堕胎罪の適用範囲と人の始期……130
胎児傷害、胎児殺害……131
堕胎罪と殺人罪、堕胎罪と保護責任者遺棄罪……133

●後編 刑と法

第四章 人はなぜ罪を犯すか 犯罪意識の考慮と刑罰

「死刑制度」について……136
犯罪の考慮されるべき側面……138
口唇期の体験とクレプトマニー……140
悪なる性格、犯罪的性格と刑罰……142

第五章 少年事件はどうとらえられるべきか 少年法とその周辺

少年事件と大人の「ゆるやかな」共犯者とまではいえない「ゆるやかな」無謀犯……144
少年犯罪と社会病理現象……146
少年犯罪と少年法……148
内省、反省VS非難……149
規範意識の育て方……151
少年をとりまく環境……153
大人と子供と組織……164
故意犯に対し不作為的に関与した場合……166
「ふざけ」と犯罪……168
グレーゾーンとストーカー、セクシャルハラスメント……169

第六章 人の犯罪はどう裁かれるべきか 刑法のベクトル

刑法の機能とベクトル……175
積極的に相手に加害の意思をもって反撃する行為……176
故意犯、過失犯と共犯……177
致犯と教唆犯、幇助犯、共同正犯……177
過失犯には助長、促進犯のみ成立……179
過失犯には競合犯のみ成立……181
いろいろな犯罪パターン……182
幼児虐待と死亡……184
幼児虐待と殺人罪……184
準強盗罪の立法化……185
窃盗犯から窃盗した場合……187
集団暴行、傷害、リンチと犯罪の成立……188
共同正犯者間の主従関係……190
マインドコントロールされている場合……192
因果関係とベクトル……198
米兵ひき逃げ事件と因果関係……200
ひき逃げ……201
殺意をもって強姦した場合……201
強姦犯人と強盗犯人はお互いに共同正犯になれるか……202
A、Bが窃盗を共謀したが、Bが強盗した場合……203
A、Bが強盗を共謀したが、Bが窃盗した場合……203
横領と背任……204
封緘、施錠された包装物と横領……205
死者の占有……205
暴行後の奪取……206
強盗致死……206
事後強盗罪の共同正犯……207
不法原因給付と詐欺罪……209
公務執行妨害罪と適法性の判断……209
汽車転覆等、致死罪……210
盗品譲り受け等の罪のベクトル的理解……211
窃盗を教唆し、その犯人から財物を買い取る行為……211
傷害現場助勢罪……212
同時傷害の特例の理解の仕方……212
集団リンチと傷害致死罪の成否……213
住居侵入罪と三分の一既遂犯か多数決……214
手段ベクトルと目的ベクトル……214
承継的共同正犯の理解の仕方……216
共犯者の認識内容より軽い犯罪を実現……217
強姦の着手時期、窃盗の着手時期等……217
強姦後にはじめて女の宝石を奪取する意思が生じ、奪取した場合……218
強姦致死罪の理解……218
正当防衛行為に対して緊急避難しかできない第三者……219
正当防衛中に近くの人Cが死亡した場合……219
暴行、傷害教唆と強盗罪……220
窃盗を教唆したら本犯者が強盗した場合……221
強盗を教唆したら本犯者が窃盗のみ実行……221
強盗を教唆したら本犯者は暴行のみ実行……222
A、Bが窃盗を共謀、実行中Bが居直り強盗した場合……222
A、Bが窃盗を共謀、Bのみ実行したが強盗に転化した場合……223
AはCに強盗を教唆、BはCに窃盗を教唆、CはDに強盗を実行した場合……224
AがCに強盗を教唆、BがCに窃盗を教唆、CがDに窃盗した場合……224
恐喝を教唆したら、強盗をした場合……225
自爆テロとベクトル……225
自殺志願者が他人を教唆し、自殺幇助させた場合……225
一人対五人と正当防衛……226
一人のみ過剰防衛となる場合……227
教唆と幇助を同時にしたらどうなるのか……227
保険金殺人、相続人殺人……228
タクシー代を踏み倒す目的でタクシードライバーを殺害した場合……228
火災保険を取る目的で古い自分の家に放火した場合……229
友人に自分を自動車で負傷させ損害保険金をだまし取る場合……230
いわゆる因果関係の錯誤……230
錯誤……231
予備罪と共犯……231
覚醒剤を注射したら心不全で死亡してしまった場合……232
他人を誤って死亡させた場合……232
不能犯のベクトル的理解……233
Aが警官からピストルを奪い、それを人に向け発射したが、弾が入っていなかった場合……235
毒入りと無毒のびんを取り違えて飲ませた場合……235
中止犯と逆ベクトル……236
致犯についてのコメント……238
誤想防衛と致犯……239
共犯と錯誤……239
被告人が自己の事件について他人に教唆して偽証させた場合……240
犯人自身が証拠を隠滅してもなぜ処罰されないか……241
たぬき、むじな事件……241
誤想防衛のベクトル的理解……242
ひき逃げ事件と殺人罪……242
身分犯とベクトル……243
身分犯……245
自殺教唆……247
ある人AがBを殺害したが、未遂に終わった場合……248
手段、方法、手口と動機、計画性……249
客体の保護法益と確率的アプローチ……250
性的不能者(インポテンツ)と強姦……252
死人を生きていると人と思い、ピストルを発射した場合……253
性転換と強制猥褻、強姦……253
共同して強姦し、女性が死亡した場合……254
エイズにかかっている男性が、女性と肉体関係をもつ場合……255
男性が男性に、女性が女性に猥褻行為をした場合……256
両親が反対しているのに恋人を一方的に自分(息子)の部屋に入れ、泊めた場合……256
住居侵入罪と戸主(管理権者)……257
幼児、身体障害者に対する逮捕・監禁……258
「女性心理」と犯罪……258

第七章 そのときどんな罪が問われるか 刑罰のメカニズム

強姦中に女が舌をかんで自殺した場合……260
「私はエイズよ」といったら男は強姦しなかった場合……261
強姦→和姦……261
登山中重傷を負った仲間を救助せず下山した場合……263
強姦致死罪と「機会」……265
「生理中だから……やめて」といった場合……265
「エイズだからコンドームをしてやって」といった場合……266
交通事故と保護責任者遺棄罪……267
傷害、強姦と自殺……269
逮捕等致死罪と殺人罪……272
予備の共同正犯……273
保護責任者遺棄致死罪と殺人罪……274
予備行為の中止……275
石像を「人」と錯覚して、殺害の意思で発砲した場合……276
スカラー量によるベクトル的方向性……276
植物人間と監禁……278
横領と背任の区別……279
刑法第二三〇条(名誉毀損罪)の本質……281
盗品であることの認識がなく盗品をあずかった後、それを着服した場合……282
AがBに覚醒剤を購入してもらうために一千万円を渡した場合……282
窃盗犯人から第三者が窃取したが、それがたまたま自分の所有物であった場合……283
禁制品と窃取……284
公務執行妨害罪における「職務行為の適法性」……284
刑法第一二五条、一二六条、一二七条の関係……286
偽証罪における「虚偽の陳述」……288
放火殺人罪についての疑問……291
追死の意思と愛の結晶作用……294
放火罪……295
傷害致死の本質について……298
刑法第二〇八条の意味……301
傷害致死罪の本質と「致犯」……301
火傷を負わせた女性が自殺した場合……304

第八章 罪はどのように裁かれるべきか 人権と刑罰

刑罰の内容……305
応報刑罰主義と刑罰の軽重……308
裁判の迅速化、裁判の限界……309
刑法第二〇四条、二〇五条、二〇八条……311
ドイツ刑法第二一一条のもつ意味……312
嫌疑が充分にあることは起訴条件か?……314
裁判官の心証形成・検察官の心証形成……315
自白と補強証拠の本質……318
被告人の取り調べは可能か?……320
公訴事実の同一性と判例……321  
公訴事実の同一性と判例……322
訴因変更の必要性と変更の請求、変更の許可、変更の命令の関係……323
強姦致傷の訴因につき単純強姦と判明した場合……324
訴因変更の必要性……324
公訴時効の本質……326
余罪取調べ……327
被疑者の黙秘権……328
被告人の取調べ……329
共犯者たる共同被告人の証人適格……330
補強証拠にどの程度の証明力が必要か……330
自白の証拠能力の限界……331
「共犯者の自白」に補強証拠を必要とするか……332
接見交通権のあり方……334      
被疑者の証拠保全請求権の実質的保証……335
別件逮捕、勾留……336
職務質問……337
任意捜査と強制捜査……338
捜査段階における検察官の役割……340
公訴権の濫用……344
被告人は「証人」になれるか……347
刑事訴訟法第三一九条(自白の証拠能力)……348
刑事訴訟法第三一九条二項の意味……351
免訴判決の本質について……352
刑事訴訟法第一九九条(逮捕状による逮捕の要件)……353
同一犯罪事件の共同被告人の自白……356
弁護士の接見交通権、立会権等について……357
タバコ、香水と多数決?……358
公務員の人権制限についての私の考え方……360
「精神病の容疑者にも裁判を受ける権利がある」……363

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