不動産業界を変える!−ハウスドゥの挑戦

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  高橋 範夫 著 並製本192頁  2007年2月17日初版発行 定価:1,470円(税込)
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  「このままではいけない。不動産業界を変えていこう!」
  京都の不動産ベンチャー、ハウスドゥ社長安藤正弘が立ち上がった。
  今、時代が、不動産ビジネスが動く!
  2006年2月、ハウスドゥは不動産仲介のFC展開をスタートした。
  激戦区京都で勝ち抜いてきた店舗運営ノウハウを武器に、“勝つ”仕組みを全国に一気に広め、
  それによって不動産業界のレベルアップを図ろうとしている。
  根底にあるのは『不動産業界を変える!』という壮大な夢と志である。
  ビジネスに命をかける企業家の生き様を渾身レポート!


カバー表 
 ISBN978-4-434-10292-9 C0034 \1400E

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●著者略歴

高橋 範夫(たしはし のりお)

1960年北海道生まれ。83年早稲田大学教育学部英語英文学科卒。編集プロダクション勤務、フリーランスライターなどを経て97年企業家ネットワーク入社。経営誌『企業家倶楽部』の編集委員・副編集長を06年まで務め、トレンドライフ設立。経営ジャーナリストとしてベンチャー企業の取材を精力的に行っている。著書に『われら競馬人』『ジャストシステム』『ラオックス ザ・コンピュータ館』『ピピンプロジェクト』(以上コーエー刊)がある。


はじめに

 言われて初めて気づくということが、けっこうあるものだ。不動産業界がおかしい、後れているなんていうことも、その一つである。
 宝石、高級時計、自動車といったものを買うとき、われわれは胸を弾ませる。高価なものを買うのだから、店の人の対応もとびきり親切で自尊心も満足させられる。ところが、それよりもさらに高価な家を買うとなると、買物を楽しむどころか、自尊心をズタズタにされることもめずらしくないのである。おかしな話である。
「不動産会社にどんなイメージを持っていますか」
 インタビュアーの質問に対して、街を行く人々が答える。
「なんか、騙されるんじゃないか、という感じがしますね。うさんくさいというか」
「目上の人から言われているようで怖いですね」
「裏がありそうで、信用しきれない感じがします」
「なんとなく、なんか悪いことをしてそうな……」
 社会の根幹とも言える事業に対して、このイメージの悪さはひどい。これほどダーティーなイメージが染み付いている業界は他にない。一番の理由は業界の近代化が後れていることにある。このため、良心的な対応をしていても消費者にとっては、偉そうな顔をしたおじさんにメガネの奥からじっと見詰められ、専門知識を盾にいいように言い含められてしまう、というような印象がぬぐえない。事実、嫌な経験をした消費者が少なからずいる。これは業界と消費者の双方にとって不幸なことだ。
「これではいけない。業界の近代化のために、これからの経営者人生を賭けよう」と、立ち上がった企業家がいる。それが本書の主人公、ハウスドゥ社長の安藤正弘である。
 ハウスドゥは1991年京都府で生まれ、京都府で成長してきた中堅不動産会社である。グループ全体で年商38億円(05年12月期)、社員数150名あまりの不動産ベンチャー企業である。売り上げの内訳は中古住宅買取事業で22億円、リフォームで10億円、仲介事業で6億円あまり。2007年度決算での上場をめざしている。
 地方の中堅ベンチャー企業家がこうした理想を掲げ、大きな夢と志に向かってチャレンジする例はめずらしい。筆者は長年、経営者の取材をしてきたが、多くは地方の成功者の地位に甘んじ、満足してしまうものである。理想を語ることはできても、血のにじむような苦労をして築いた地位、財産を、そのために投じる決断はなかなかできることではない。しかし、安藤はチャレンジする道を選んだ。それはなぜなのか。これからの不動産業界はどのような方向へ進み、安藤とハウスドゥは、そこにどのように関わり、闘い、夢を実現しようとしているのか。
 戦後61年、わが国に戦争はない。しかし、ビジネス社会では経済という名の戦争が行われてきた。武器はずばり“カネ”である。人がいなくなっても会社は倒産しないが、カネが尽きると会社は倒産する。究極的にはカネの戦争なのである。その中に生身の人間が1人で分け入って、組織をつくり、武器を貯え、一つの勢力をつくり、維持していくのが創業経営者である。最も象徴的な現代の戦士が創業経営者だと私は思う。カネの戦争だからといって、その計算ばかりしていれば勝てるかというと、そうはいかない。人間社会の中で価値を生み出さないと、カネなど入ってくるはずがない。より高い価値を生み出した者が勝つのだが、それはカネの計算とは別のところにあるのだ。夢や理想といった対極のところに、その宝は隠されている。そのために創業経営者は人間として高いレベルの総合力が求められ、夢と現実の落差にもがき苦しむのである。
「不動産業界を変える!」と宣言し、日々奮戦する安藤正弘とハウスドゥをレポートしていくことで、その息吹を少しでも伝えられたら幸いである。

2006年12月28日  著者


 《目次》 

はじめに 1


第1章 不動産業界に変革の時が来た

戦う不動産ベンチャー 10
不動産業界に変革の時が来た 13
今後10年は中古住宅の時代 14
今後の住宅市場 17
FCと中古住宅が主役のアメリカ 18
個人商店が多い理由 19
お客さんが来てくれない 20
ネット社会の進展で淘汰は加速する 23
大手が中小を飲み込んでいく 25


第2章 不動産ベンチャー ハウスドゥ

三位一体のサービス 28
時間と勝負の店舗運営システム 30
命がけの新卒採用活動 33
新卒社員たちの声 36
25歳の営業部長 43
ライバル店を変えた向日店の躍進 49
上司は部下をサポートする 51
夢は『プロジェクトX』出演 53
情報のスピードと量では負けない 55
明日になったら誰かが買ってしまう 58
考え抜き、行動することでビジネスが生まれる 60
愛情が強い人間をつくる 62
日経ビジネスで5位! 65
こんなにいい商売なのに人材が来ない 66
消費者が一番損をしている 69
感動を売る現場 70
忘れられない契約 71


第3章 創業経営者 安藤正弘

生い立ち 74
21歳で700万円貯める 77
君は何に命をかけるか 79
オリエントハウジング創業 81
利益は出ても人が来ない 83
クリップ一つにこだわる 84
クレームでの気づき 86
緻密な経営者 88
社長は温厚な人でいてくれ 90
我流では勝てない 93
コンプレックスが事業を大きくさせる 94
創業経営者の言葉 97
お客様から必要とされ、お客様へ尽くす 99
皆よ経営者であれ! 102
2006年幹部方針 107
才能は世のため人のために使え 110
人の役に立つ人間になる 112


第4章 FC事業にかける

100を超えると一気に広がる 116
センチュリー21の門を叩く 119
10ヵ月で35契約 121
竹中改革でチャンス到来 122
社長、4億円にしましょう 124
現場のノウハウを持つFC本部 127
日本の不動産FCの現状 128
不動産FCの時代が始まった 132
創造的破壊も辞さない覚悟 133
不動産FC化で一番得をするのは顧客 135
ハウスドゥFCの概要 137
業界がよくなることは何でもやる 139
世の中を進歩させた褒美が利益 141
運命のダイレクトメール 142
社員が生き生きと動き出した 144
第2創業期の気概で 145
忙しくさせてやるのが経営者の務め 147

第5章 幹部たち

心にぐさっときた言葉 150
買取事業を全国展開する 153
行動を分解し、仕組み化する 154
FC事業も成功させる 157
ええとこ取りしてどうするんや 158
決めたら絶対にやる経営者 161
成功するためにはなんでもやる 163
クルーザーは贅沢か 165
ダイエーから5年越しで転職 166
あたりまえのことを地道にやり続ける 168
弾ける若手社員 169

第6章 夢を追って

師走のFC説明会 172
理念に賛同し、加盟店も協力 175
人材がいれば何でもできる 178
存在価値が高いと感じたとき幸せを感じる 180
俺がやったと言えるものを残したい 182
大志をいだくのが一番いい 184
不動産業界を変える! 186


おわりに 190


 おわりに

 安藤正弘社長に初めてお会いしたのは2004年です。私が事務局長をしていた東京の経営者セミナーに安藤社長が入学したのがきっかけです。「上場についていろいろ知りたいのです。指導してくれるところありませんか……」名刺交換をするなり、質問されたのが印象に残っています。それから毎週、京都から東京へ泊りがけで勉強に来られました。「東京のホテルでどこかいいところ知りませんか」そんな質問も受けました。本書の中に、幼い頃“質問マン”というあだ名をつけられたと書いてありますが、そういえば、確かによく質問をする社長です。
 150人もの組織を率いている社長なのに、偉そうなそぶりを一切せず、ものすごく低姿勢で質問をするのです。常に何かを求めているような眼をしています。「能ある鷹は爪を隠す」という言葉が思い浮かびます。伸びる経営者は例外なく謙虚で勉強熱心ですが、現状に満足せず、上を上をと求め続けているから勉強もするし、謙虚でいられるのでしょう。
 そういう安藤社長のストイックな生き様から、「不動産業界を変える!」という大きな志が出てきたのです。全国の不動産経営者が安藤社長の志に賛同し、同士としてやっていきたいという経営者が早くも現れているのも、その志が本物であることを示しています。この輪が日に日に大きくなり、大きな渦、潮流となっていくことを想像するだけでワクワクしてきます。1人の人間の夢、志が世の中を変えていくことを、過去の逸話としてではなく、現在進行形で見られるのです。そこに少しでも関われたら最高だと思います。
 コンビニエンスストアも1974年、東京・江東区にできたセブン−イレブン1号店から始まったのです。全国に無数にある“町の不動産屋さん”を合理化、近代化し、誰もが気軽に立ち寄れる“不動産コンビニ”が全国に広がる。そんな壮大な夢が、夢でなくなる日がきっと来ると思います。その日を夢見て、安藤社長が全国を巡る日々はこれからも続くことでしょう。
 そしてもう一つ。京都で生まれ、京都で育った企業家をじっくり取材できたのは大きな収穫でした。安藤社長の柔らかい物腰や言葉を通して京都の文化を感じました。東日本にはない洗練されたものがあります。そこで培われた繊細な感性は不動産ビジネスの分野でも何らかの形で反映されていると思います。その言葉をどこまで文章に反映するかで悩みました。すべて標準語に直してしまうのも味気なく、臨場感が伝わりません。かといって京都弁をそのまま書くこともできず、両方が入り混じったようになっているのはご了承願いたく思います。
 最後に、安藤社長をはじめハウスドゥの方々、取材に快く応じてくれた方々には大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

著 者


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