俳句集美の切抜帖 
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  平野政市・内藤洋子編 A5判上製本 2000年12月16日初版発行 定価1,575円(税込)
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太平洋戦争において満州に出兵した日本軍の有志が、終戦後、復員までの間に催した句会での、故・平野政市編による句集復刻版。本書の出版は、娘であるエッセイスト内藤洋子が、今はなき父と当時の日本軍英霊を忍び、父の命日に出版したもの。困難を乗り越えた者が持つ独特の、暖かさや機知が伝わってくる作品の魂が伝わる。

中日新聞2000年12月31日で紹介されました。


ISBN4-434-00765-3 C0092 \1500E

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この句集を出版するにあたって(平野政市・長女・内藤洋子)

 本書は、中国北部(河南省・商邱)で敗戦を迎え、復員を待つ五カ月間(昭和二十年十二月八日から翌二十一年四月十一日まで)、現地で開かれていた句会「早春会」の作品記録である。
 昭和三十六年に病死(肝硬変)した父・平野政市が戦地から大切に持ち帰った謄写版刷りの句誌『美の切抜帖』を、いつかはこうした「本」という形にしたいと想っていた。
 父が戦地にあっても好きな俳句を忘れず、句会をまとめ、句誌の編集に携わっていたことを、私は娘として誇りに思ってきた。
 もっとも、敗戦の年の父は、まだ独身の二十五歳。復員二年後に私の母・志き枝と結婚し、私はその翌年に生まれている。
 父の後を追うように、昭和四十二年、母・志き枝も病いに倒れた。
 亡くなる直前の母から私に手渡された父の遺品の中に、手書き・ガリ版刷りの『美の切抜帖』はあった。編集も文字も、父・政市の手によるものである。
 父は復員後、名古屋市中村区で金物小売店を開業。近所で開かれていた句会にも、熱心に通い続けた。が、どういうわけかそのころの記録は、まったく残っていない。
 表紙が少し黄ばんだ『美の切抜帖』を母から受け取ったとき十七歳だった私も、もう五十歳になった。若くして逝った父の無念さを思うようになった。
 父と共に過ごせたのは、わずか十二年間だった。
 父とは、どんな人だったのだろう。
 抱いていた夢とは、何だったのか。
 そして、戦火の中の青春とは……
 本書の中に、それを見つけてほしい。という、父・政市の声なき声を感じています。


●編者プロフィール

内藤洋子(ないとう ようこ)
エッセイスト。
昭和24年名古屋市生まれ。
デビュー作『わが故郷は平野金物店』(エフエー出版)は、NHK連続TVドラマ「ようこそ青春金物店」の原作に。
著書、エッセイ執筆多数。パワフルな講演も全国で好評を博している。
最新刊は『チャンスはどこにでも』(日本経営協会総合研究所)
中日文化センター講師。
実弟は千葉ロッテマリーンズの平野謙・二軍監督。


●目次

 第一回入選句集 「凍て」「鴉」    昭和二十年十二月八日
 第二回入選句集 「北風」「手套」   昭和二十年十二月十一日
 第三回入選句集 「霜」「毛布」    昭和二十年十二月十七日
 第四回入選句集 「冬雑詠」     昭和二十年十二月二十二日
 
 新年を迎えて
 第五回入選句集 「師走」「雑煮」   昭和二十一年一月三日
 第六回入選句集 「雪」「寒雀」    昭和二十一年一月八日
 第七回入選句集 「マスク」「毛皮」  昭和二十一年一月十七日
 第八回入選句集 「冬雑詠」     昭和二十一年一月二十三日

 選を終りて
 第九回入選句集 「冬日向」「すき焼」 昭和二十一年二月一日

 第十回入選句集 「冬晴」「タドン」  昭和二十一年二月十三日
 第十一回入選句集「春めき」「芽」   昭和二十一年二月二十日
 第十二回入選句集「陽炎」「早春雜詠」 昭和二十一年二月二十七日
 第十三回入選句集「如月」「麗ら」   昭和二十一年三月七日
 第十四回入選句集「朧」「春愁」    昭和二十一年三月十一日
 第十五回入選句集「歸雁」「長閑」   昭和二十一年三月十八日
 第十六回入選句集「春雑詠」「春風」  昭和二十一年三月二十三日
 第十七回入選句集「春宵」「菜の花」  昭和二十一年三月二十八日
 入選句集    「春雑詠」      昭和二十一年四月三日
 入選句集    「春の夜」「春の草花」昭和二十一年四月十一日
 上海にて     三葉(平野政市)    昭和二十一年五月五日
 俳聖を偲ぶ
 俳句の友
 平野政市履歴書(軍隊関係)
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 赤き黄河の流れに−−『美の切抜帖』の再編にあたって 内藤洋子

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